慰謝料の具体的ケース
後遺障害を負った老人・高齢者の慰謝料は?
このページでは、「後遺障害を負った老人・高齢者の慰謝料の考え方、増額理由、慰謝料算定の具体例」について徹底調査した結果を報告しています。
老人・高齢者であることを理由に慰謝料を減額された場合は!?
老人・高齢者が交通事故で後遺障害を負った場合、後遺障害等級に対応する慰謝料相場が決められている。保険会社から提示される慰謝料額が相場よりも低すぎるのではないかと疑問を持つ被害者は多いのではないだろうか。
実際、加害者側の保険会社は、死亡慰謝料については、65歳以上の高齢者について、200万円も低い基準で運用している。重度後遺障害の場合にも、高齢者であることを理由に低い慰謝料を提示してくることは十分考えられる。
老人・高齢者の慰謝料を減額する主張の根拠は、若年者に比べて余命が短いため、精神的苦痛の程度も小さいというものだ。
たしかに、被害者が子供の場合と比較すると、老人・高齢者の後遺障害の継続期間が圧倒的に短くなるのは否定できない。
しかし、そもそも現行の慰謝料相場が低すぎるため、被害者が子供の場合に慰謝料を増額すれば足り、老人・高齢者の慰謝料を減額すべきではないだろう。
さらに、高齢者は、後遺障害への適応能力が低く、若者よりも精神的苦痛の程度が大きいことも考えられる。過去の裁判例をみても、高齢者であることを理由に、相場よりも慰謝料を減額された例は少ないようだ。
保険会社や加害者側の弁護士から、老人・高齢者であることを理由に低い慰謝料額を提示された場合には、弁護士を通して、断固として相場通りの慰謝料を払ってもらうように粘り強く交渉すべきだろう。
(まとめ表)
減額肯定派 | 50歳以上の高齢者は、後遺障害の継続期間が若年者より短いため、精神的苦痛の程度は小さい |
減額否定派 |
・現行の慰謝料相場が低すぎるため、高齢者減額を認めるべきでない
・高齢者は逸失利益も十分でないことが多いのに、慰謝料まで低くするのは不当 ・高齢者は後遺障害への適応能力に乏しく、精神的苦痛は大きい |
裁判実務の傾向 | 相場からの減額を行う裁判例は少ない |
老人・高齢者が一家の支柱の場合は慰謝料を増額してもらえる!?
現代の家族構成は様々であり、老人・高齢者が家族を扶養しており、いわば一家の支柱としての役割を果たしていることもしばしばみられるようだ。
老人・高齢者が一家の支柱である場合に重度の後遺障害を負うと、家族は扶養を一部失うことになる。
被害者本人としても、まだ扶養すべき家族がいる中で、後遺症を負って働けなくなることの精神的打撃は大きいといえるだろう。
そこで、東京三弁護士会の慰謝料部会は、一家の支柱である老人・高齢者が1級~8級の重度後遺障害を負った場合には、相場よりも20~30%慰謝料を増額することを提案している。
裁判官がここまで踏み込んだ慰謝料の増額を行うことは多くはないが、慰謝料額を決定するにあたって、老人・高齢者が一家の支柱であった事実が重視される可能性が高いだろう。
そもそも低すぎる慰謝料相場を少しでも引き上げるには、老人・高齢者である被害者が家庭内で果たしていた役割の重要性を根拠に、慰謝料を増額して請求していくべきだろう。
(まとめ表)
増額される場面 | 老人・高齢者が一家の支柱に当たる場合 |
増額根拠 |
・家族が扶養を一部失うため
・扶養家族を抱える本人の精神的苦痛が単身者に比べて大きいため |
対象となる後遺障害 | 1級~8級の中程度~重度のものに限る |
増額割合 | 相場の20~30%分を増額 |
老人・高齢者の家族の固有の慰謝料はいくらもらえるの!?
老人・高齢者が交通事故で後遺症を負った場合、主に被害者と同居していた家族としては、一緒に健康に生活していく楽しみを奪われるのみならず、介護生活を強いられる事態になる。
そのため、被害者本人だけでなく、家族が固有の慰謝料を請求できることもあるのだ。
以下の一覧表を見れば分かるが、1級~7級までの重度後遺障害を負った場合には、家族固有の慰謝料を認めてもらいやすい。
固有の慰謝料の金額は、被害者との従前の関係や後遺障害の程度、介護の要否などで異なるが、家族一人当たり100万円~300万円程度が相場といえるだろう。
ただし、老人・高齢者が被害者となった裁判例では、固有の慰謝料が認められたのは配偶者と子供までであり、孫や兄弟姉妹に慰謝料を認めたものは見当たらない。
老人・高齢者の交通事故で、できる限り慰謝料を多く回収するためには、家族も原告に加わった上で、固有の慰謝料も含めて請求するのが有効といえるね。
(まとめ表)
老人・高齢者の後遺障害の慰謝料について、基本的な考え方をまとめてみたけど、ポイントは理解できただろうか。この報告を踏まえて、以下の3点を押さえておくといいだろう。
①老人・高齢者だからといって、相場より慰謝料を減額されるべきではない。
②一家の支柱の場合は、増額して慰謝料を請求することを検討すべき。
③老人・高齢者の家族も固有の慰謝料を請求すべき。
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後遺障害の慰謝料.comの監修医師
藤井 宏真 医師
奈良県立医科大学附属病院 勤務
アトム法律事務所 顧問医
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