認定までの流れと期間はこうだ
後遺障害認定に対する異議申立ては?
このページでは、「交通事故の後遺障害認定に対する異議申立ての位置づけ、認容される確率、裁判との比較」について徹底調査した結果を報告しています。
後遺障害認定に対する異議申立てはどういう制度なの?
交通事故の被害者が自賠責保険において後遺障害の認定を受けたが、認定結果に不服がある場合は、異議申立て制度を利用することができる。
自賠責保険における後遺障害の認定は、損害保険料率算出機構という第三者機関が行うが、認定内容に法的拘束力はない。そのため、これに対する異議申立てにも法的根拠はないようだ。
異議申立ては、厚生労働省の通達である労災の後遺障害認定基準に準じて審査され、不利な等級への変更は禁止される(不利益変更の禁止)。
また、異議申立ての審査は、損保料率機構内に設置された自賠責保険審査会という専門部会が担当し、弁護士や医師などが構成員に含まれている。
自賠責保険の時効期間内であれば、異議申立て独自の期限はなく、何回でも無制限に申し立てることができる。
このように、自賠責保険における異議申立て制度には法的根拠はないものの、専門的な審査機関による客観的な認定基準に基づく審査がなされ、信頼するに足りる制度といえる。
ただし、異議申立て制度はあくまで画一的な認定基準に基づく審査しかできないので、柔軟な判断ができないという短所もある点に注意が必要だ。
(まとめ表)
法的根拠 | なし |
審査機関 | 自賠責保険審査会(弁護士・専門の医師などが構成員に含まれる) |
審査基準 | 労災の後遺障害認定基準を準用 |
期限 | 時効期間内であれば期限なし |
回数制限 | 無制限 |
不利益変更 | 不利な等級への変更は禁止される |
異議申立てが認容される確率はどれくらい!?
後遺障害認定に対する異議申立てをしても、等級を覆すためのハードルは非常に高いようだ。最近の統計では、異議申立てがされた件数のうち、従前の等級認定が覆った割合は、たった5~6%にすぎない。
異議申立ては、弁護士や医師が構成員となった自賠責保険審査会において、自賠責の認定基準に基づいて審査されるため、審査結果は専門的知見に基づくものであるといえる。
それでも認容率が低い原因は、認定基準を意識せずに漫然と異議申立てをしている件数が多い点にあると予想できる。
弁護士に依頼して、認定基準を意識した後遺障害診断書の再入手や、医療記録の取り寄せなどの準備を万全に行えば、異議申立てで認定等級が覆る可能性を高めることができる。
(まとめ表)
等級変更あり | 等級変更なし | 再調査・時効等 | |
平成25年度 |
4.88% |
92.93% |
2.18% |
平成24年度 |
6.06% |
91.76% |
2.18% |
※損害保険料率算出機構に設置された自賠責保険(共済)審査会における異議申立事案の審査結果の統計に基づきます。
異議申立てと裁判ではどちらを選択すべき!?
異議申立てが認容される確率が5~6%と極めて低いのであれば、そもそも異議申立てをせずに、いきなり裁判をしたほうが効率的なのではないかとも思えたので、どちらを選ぶべきか調査してみた。
たしかに、異議申立てで等級が覆る可能性は低いが、それは裁判でも同じことだという。裁判では、自賠責保険の等級認定に拘束されずに判断してもらえるが、事実上、自賠責での認定結果が重視されることが多いね。
裁判で主張が認められなければ、それ以上の不服申立て手段はなく、後遺障害等級に不満のまま結果が確定してしまう。裁判で負けるリスクはとても大きい!
一方、異議申立てが認められなくても、再度異議申立てを行うこともできるし、裁判を起こすこともできるので、リスクとしては相対的に低いといえるだろう。
異議申立てには裁判ほどの時間もかからないし、主張が否定されることによるリスクも低いので、先に異議申立ての手続をしておくのが望ましいだろう。
万一、異議申立てが認められれば、裁判でも同様の等級を前提に損害賠償を認めてもらえる可能性が高くなる。弁護士に依頼した上で手続をとれば、より有利な認定結果を獲得できる可能性を高めることができるよ。
(まとめ表)
異議申立て |
裁判 |
|
認容される確率 |
低い |
低い |
棄却されることによるリスク |
低い |
高い |
審理期間 |
短い |
長い |
後遺障害の慰謝料.comの監修医師
藤井 宏真 医師
奈良県立医科大学附属病院 勤務
アトム法律事務所 顧問医
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