顔眼鼻口の後遺障害マニュアル

口の後遺障害の慰謝料マニュアル

このページでは、弁護士が「口の後遺障害の慰謝料」について解説しています。

交通事故による外傷が原因で口や歯に障害が生じると、生活の中での楽しみである食事が苦痛となったり、仕事等で不可欠な会話が困難になったり、大変ですよね。

交通事故で口や歯に障害を負ってしまった方のために、交通事故で生じる口や歯の障害の種類や、交通事故の相手方への慰謝料請求の相場等についてご紹介いたします。

口・顎・歯の外傷の基礎知識

交通事故により生じる、口周辺の外傷としては、どのようなものが多いのでしょうか。

最も一般的なものは、やはり顎の骨の骨折でしょう。次いで、顎の関節の脱臼や、歯の破損等のケースが多いですね。

やはり骨折が多いんですね。想像しただけで痛そうです…。

交通事故による顎骨骨折

顎骨

[Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

顎骨骨折は、交通事故で最も一般的な外傷といえるでしょう。顎の骨を骨折した場合、単にその部分が痛むだけではなく、上下の歯のかみ合わせが変化したり、口が大きく開かなくなったりすることもあります。

交通事故による顎関節脱臼

交通事故の衝撃により、顎の骨の関節が外れる、顎関節脱臼の状態になることがあります。顎関節脱臼の状態になった場合、突発的な顎の激痛が生じると同時に、口が開いたままになり、閉じることができなくなります

このような顎の脱臼は、以前に一度顎の脱臼を経験している場合や、顎を頻繁に動かしている場合等、顎の関節が緩んでいる場合に生じやすくなります。

交通事故による歯の破折、動揺、脱臼

交通事故により、歯に外傷が生じるケースも非常に多いです。

外傷により、歯が欠けてしまった状態を破折、ぐらつきがある状態を動揺、歯がとれてしまった状態を脱臼といいます。

特に問題なのは脱臼がある場合で、外傷により歯が抜けてしまった場合、その後30分以内に歯を再び埋め込まなければ、時間が経つにつれて健康な歯に戻る可能性が低くなるといわれています。

(まとめ表)

一般的な外傷 具体的な症状 全治期間
顎骨骨折 外傷部の激痛、噛み合わせのズレ、口が大きく開かない等 上顎と下顎を固定した後、約6週間の安静
顎関節脱臼 外傷部の激痛、口を閉じることができない等 顎を正常な位置に戻した後、最低6週間の安静
歯の破折、動揺、脱臼 外傷部の激痛、咀嚼の際の違和感や痛み等 (歯を再植した場合)その後7~10日間の固定

口・歯の後遺障害にはどんなものがあるの?

交通事故で口周辺に外傷を受けた場合、その後に残るかもしれない後遺障害にはどのようなものがあるのでしょうか。

一般的な障害は、そしゃく機能障害です。特に、固形物を自ら食べることができない場合などは、生活に極めて大きな支障が生じると言えるでしょう。他には、言語機能障害等もあります。

そんなこともあるんですか。流動食以外の食事ができないなんて、考えたくもないですね・・・。

そしゃく機能障害

交通事故の外傷により、「噛む」という動作に支障が出ることがあります(そしゃく機能障害)。

そしゃく機能障害には、一切の固形物を摂取できない場合から、そしゃくはできるものの、固形物の摂取に長い時間がかかる場合まで、様々なケースがあります。そして、以下の表の通り、ケースに応じて認定される後遺障害等級が変わってきます。

言語機能障害

交通事故の外傷により、一定の発音ができないなど、言語機能に障害が生じることがあります。この言語障害にも様々なケースが存在しますが、後遺障害等級を認定するにあたっては、口唇音(ま行音、ぱ行音等)、歯舌音(な行音、た行音等)、口蓋音(か行音、が行音等)、喉頭音(は行音)の4種類の語音のうち、何種類の語音が発声できるかにより認定されます。

(そしゃく機能障害と言語機能障害の認定基準)

等級 後遺障害
1級2号 流動食以外摂取できない及び
3種以上の語音が発音不能
3級2号 流動食以外摂取できない
または
3種以上の語音が発音不能
4級2号 粥食等以外摂取できない
及び
2種の語音が発音不能又は綴音機能に障害
6級2号 粥食等以外摂取できない
又は
2種の語音が発音不能若しくは綴音機能に障害
9級6号 固形食物の一部に十分にそしゃくできないものがある
及び
1種の語音が発音不能
10級3号 固形食物の一部に十分にそしゃくできないものがある
または
1種の語音が発音不能
12級 そしゃくに相当時間を要する

歯牙障害

交通事故の衝撃により、歯の破折、動揺、脱臼が生じることも多いです。この場合の後遺障害等級認定は、何本の歯に補てつ(抜けたり欠けたりした歯を補うこと)をしたかで判断されます。

歯牙障害は、そしゃく機能や言語機能にも影響を与えるため、これらと同時に認定されることもあります。

味覚障害

交通事故による、舌やその他の顎周辺組織、または頭部への衝撃により、味覚障害が生ずることもあります。

味覚障害も、全く味が理解できないものから、一定の味だけ理解できないものまで様々です。後遺障害等級の認定においては、基本4味質と呼ばれる、甘味、塩味、酸味、苦味のうち、どれだけ認知できないかにより判断されます。

舌の異常・嚥下機能障害

交通事故の衝撃により、舌になんらかの異常が生じ、または食べ物を飲み込む動作が十分に行えなくなる(嚥下機能障害)こともあります。このような場合には、そしゃく機能障害の後遺障害等級に準じて、相当な等級を定める取り扱いとなっています。

口の障害に関する判例上の慰謝料相場は?

口の障害についての慰謝料の相場は、どの程度なのでしょうか。

具体的な事情によって様々ですが、例えばそしゃく機能障害の慰謝料だと400万円から500万円程度、歯牙障害の場合だと、150万円ほどから1000万円弱まで、かなり幅があるようです。

そんなに変わってくるものなのですね。

(そしゃく機能障害の慰謝料請求の裁判例)

判例年月日 後遺障害の内容 後遺障害の等級 後遺障害慰謝料
横浜地判
昭和62.2.25
頚部痛
そしゃく機能障害
11級 420万※
大阪地判
平成3.1.25
開口障害
そしゃく機能障害
10級2号 550万※
横浜地判
平成21.9.17
そしゃく機能障害 12級 290万※
東京地裁
平成22.7.22
そしゃく機能障害
開口障害
歯牙障害
11級 450万円
※認定額不明のため、損害賠償額算定基準(赤い本)より引用

この表でご紹介した判例をみたところ、そしゃく機能障害の慰謝料の相場は、400万円から500万円程度ということが分かります。

これらの判例よりも上位の後遺障害等級に認定された場合には、慰謝料はさらに大幅に増額されることもあります。

(歯牙障害の慰謝料請求の裁判例)

判例年月日 後遺障害の内容 後遺障害の等級 後遺障害慰謝料
東京地判
平成18.3.28
歯牙障害 13級4号 180万円
大阪地判
平成21.1.30
歯牙障害 10級4号 795万円
横浜地判
平成22.1.27
歯牙障害 10級 不明
横浜地判
平成22.2.8
歯牙障害 13級4号 200万円

歯牙障害の場合は、表から分かるように、非常に幅広い額の慰謝料が認められています。

多くの慰謝料を獲得するためには、裁判のなかで、損害についての適切かつ十分な主張が必要不可欠です。

そのため、交通事故に詳しい弁護士に依頼をすることが、多くの慰謝料を獲得するために極めて重要と言えます。


後遺障害の慰謝料.comの監修医師

藤井 宏真 医師

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