重度の後遺障害等級
後遺障害等級7級の慰謝料は?
このページでは、「7級の後遺障害を負った交通事故被害者が、慰謝料で有利な解決を実現するためのポイント」について徹底調査した結果を報告しています。
7級の後遺障害の基本と慰謝料の相場は?
後遺障害7級の基本
7級の後遺障害が残った被害者やその家族にとって満足のいく解決を実現するためには、後遺障害の賠償に関する知識を習得することが大切だ。知識が不十分だと保険会社との示談で思わぬ損失を被ることがあるからだ。
被害者が7級に対応する慰謝料や逸失利益について相場水準での補償を受けるためには、前提として7級の後遺症の認定を受ける必要がある。
7級の認定を受けられるパターンとしては2つある。
一つ目は、7級未満の等級の後遺障害が複数残ったため併合7級の認定を受けられる場合だ。
後遺障害の併合の考え方や等級繰り上げのルールについて詳しく知りたい場合は、後遺症の場合の交通事故慰謝料のページが参考になる。
二つ目は、7級の後遺障害そのものに該当する場合だ。以下の表に7級の後遺障害として13種類をまとめている。
これらのうち、最も多いケースは4号の神経系統の障害だ。頭部への衝撃を原因として記憶障害や人格の変容などの症状が残る高次脳機能障害で7級に認定されるケースが多いのだ。
高次脳機能障害も含めて、7級の後遺障害の具体的な認定基準については後遺障害等級7級の慰謝料(具体例)で詳しく調査した結果を報告しているよ。
被害者としては自分の後遺障害が併合7級か単発の7級か、7級のどの種類の後遺障害に認定されたのかを自分で把握しておくことが大切だ。
後遺障害7級 |
|
1 |
一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
2 |
両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
3 |
一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
4 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
5 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
6 |
一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの |
7 |
一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの |
8 |
一足をリスフラン関節以上で失ったもの |
9 |
一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
10 |
一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
11 |
両足の足指の全部の用を廃したもの |
12 |
外貌に著しい醜状を残すもの |
13 |
両側の睾丸を失ったもの |
7級の慰謝料の相場の考え方
7級の後遺障害は片眼の失明など重篤なものが多い。被害者がこのような障害を一生背負っていく苦痛に対する金銭的補償が後遺障害の慰謝料だ。
現在の裁判実務では、7級の慰謝料の相場水準は1000万円とされている。片眼を失明したことの慰謝料として1000万円で納得できる人は、実際のところ少ないかもしれない。しかし、交通事故では7級に対応する一応の相場水準が存在するのだ。
一方、被害者が弁護士をつけずに保険会社と交渉した場合、7級の慰謝料としてその半額の500万円の提示を受けるにすぎない。
そのため、被害者や家族が、自分の判断だけで保険会社と交渉して安易に示談することだけは絶対に避けるべきだ。示談により被害者は取り返しのつかない損失を負うことになるのだ。
なお、加害者が任意保険に加入していない場合でも、被害者は自賠責保険から7級の慰謝料として409万円の支払いを受けることができる。
7級の慰謝料というだけでも、基準となる金額が3つもある。被害者は保険会社の説得に惑わされず、最低でも慰謝料相場である1000万円を確保できるように解決に向けた戦略を練る必要がある。
7級の後遺障害慰謝料 |
|
自賠責保険 |
409万円 |
任意保険からの提示額 |
500万円 |
慰謝料相場 |
1000万円 |
実際の事例で7級の慰謝料はどれくらい認めてもらえるの?
被害者が7級の慰謝料を請求するにあたっては、最近の7級の裁判例の傾向を知っておくのが有益だ。
最近の7級の裁判例12件を一覧としてまとめてみた。本人の慰謝料としては、800万円~1100万円の幅がみられた。12件の平均値は996万円であり、相場を下回る傾向にある。
12件中8件の事例において慰謝料は相場通りの1000万円となっていた。裁判では慰謝料相場が重要な位置づけを持つことが分かるね。
ただし、請求段階で相場水準の1000万円の請求しかしていない事例が4件もあることは見逃せない。被害者の請求額が相場の範囲にとどまっていることが、慰謝料が増額されにくい原因の一つといえるだろう。
また、家族固有の慰謝料を請求している事案は12件中2件しかなかった。この2件では家族の慰謝料がそれぞれ90万円と100万円認められていた。
7級の事案では家族固有の慰謝料が認められない可能性があることは否定できない。しかし、請求段階から家族の慰謝料を請求すること自体を諦めていては慰謝料の増額は全く期待できない。
慰謝料は他の損害項目と異なり、被害者やその家族の感じる精神的苦痛に対する補償としての性質を持つ。適正な金額の慰謝料を認めてもらえてはじめて、被害者にとって納得行く解決が実現することが多いのだ。
これらの裁判例からは、家族の慰謝料を未請求の事案が圧倒的に少ないことと、請求額が相場水準にとどまる事例が多いことが分かった。
被害者としては、これらの教訓を踏まえて弁護士と協力して解決に向けた方針を検討していく必要があるだろう。
(まとめ表)
(単位:万円)
7級の相場を超える慰謝料を獲得するポイントは?
慰謝料増額のポイント
7級の慰謝料は、被害者の熱意と弁護士の工夫や戦略次第で通常よりも多く獲得することができる。相場を超える慰謝料を獲得するためのポイントについて調査してみた。
前提条件として、7級の相場を超える慰謝料を獲得するためには、相場水準を超える慰謝料を裁判で請求しなければならない。
事件を依頼した弁護士が、漫然と相場の範囲内でしか請求しなければ慰謝料が増額される可能性はなくなってしまうのだ。
さらに、慰謝料を通常よりも増額すべき理由を具体的に主張立証し、裁判官を説得する必要がある。
7級という重度の後遺障害を負うと、ほとんどの事例で仕事上や家庭生活上での支障や、将来の就職・結婚その他の計画への支障が生じるはずだ。
これらの事情を裁判で具体的に主張立証できるか否かは、慰謝料の増額を認めてもらえるかどうかの分かれ道になるのだ。
(まとめ表)
相場通りの請求 |
相場を超える請求あり | |
具体的な増額理由の主張立証なし | 増額の可能性なし | 増額の可能性小 |
具体的な増額理由の主張立証あり | 増額の可能性なし | 増額の可能性大 |
慰謝料を増額して請求する場合の具体例
7級の慰謝料の増額理由は各事案に応じて様々だが、どの事例にも共通して当てはまる増額理由をまとめてみた。
まず、被害者が一家の支柱である場合は増額対象とすべきだろう。7級の労働能力喪失率は56%とされているため、これまでの職場で働き続けるのが困難な場合がほとんどだ。
このような場合には、扶養を失う家族の精神的負担や、家庭を担ってきた被害者本人の辛さは通常より大きくなることが多い。相場より20%増額して1200万円の慰謝料を請求することが考えられる。
被害者が主婦などの場合にも、家庭内での役割の大きさから、一家の支柱の場合に準じて、10%増額の1100万円を請求すべきだ。
被害者が1歳~20歳の若年者である場合には、7級の後遺症が今後継続する期間が長期にわたり、精神的苦痛も通常より大きい。20%増額の1200万円を請求すべきだろう。
先ほど紹介した裁判例で、10歳男子が被害者となった例があったが裁判を受任した弁護士は相場水準である1000万円しか請求していなかったことには問題がある。
受任した弁護士にとっても、慰謝料の請求額を設定することには被害者に対する大きな責任がある。増額を慎重に検討すべき事例だったといえるだろう。
その他、加害者が飲酒運転、信号無視など行為態様が悪質な場合や、裁判で責任回避の不合理な主張をしていた場合にも慰謝料の増額理由とされやすい。
(まとめ表)
慰謝料額 |
決定基準 |
|
慰謝料相場 |
1000万円 |
相場水準 |
一家の支柱 |
1200万円 |
約20%増額 |
母親・配偶者 |
1100万円 |
約10%増額 |
1歳~20歳前後 |
1200万円 |
約20%増額 |
加害者に故意・重過失や不誠実な態度あり |
1200万円 |
20%増額 |
まとめ
現行の7級の慰謝料相場の1000万円は、被害者にとってあまりにも低い水準だ。片目を失明して1000万円で納得する被害者は少ないのではないだろうか。
後遺障害の慰謝料は、被害者にとって精神的苦痛の補償という極めて重要な位置づけを持つにもかかわらず、弁護士や裁判官は慰謝料に対する意識が低すぎる傾向にある。
被害者としては、一生背負い続ける後遺障害に対して適正な補償を受けなければならない。
7級の慰謝料を少しでも多く獲得できるように、信頼できる弁護士と協力関係を築き、事案に応じた最善の解決方法をとるべきだろう。
後遺障害の慰謝料.comの監修医師
藤井 宏真 医師
奈良県立医科大学附属病院 勤務
アトム法律事務所 顧問医
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