上肢・下肢の後遺障害の手引き
ひじ・前腕の後遺障害慰謝料の手引き
このページでは、弁護士が「ひじ・前腕の後遺障害慰謝料」について解説しています。
交通事故によりひじや腕に後遺障害を負ってしまった方へ。肘や腕に障害が出てしまうと、日常生活や仕事に大きな支障が出てきてしまい、大変ですよね。それが利き腕だったりすると、負担はさらに大きいと思います。
このページでは、交通事故によりひじや腕に後遺障害を負ってしまった方に向けて、後遺障害の種類や慰謝料の相場等について紹介をします。
ひじ関節・前腕骨の外傷の基礎知識
前腕にある2本の骨(橈骨と尺骨)
作者 Anatomography (en:Anatomography (setting page of this image)) [CC BY-SA 2.1 jp (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/deed.en)], ウィキメディア・コモンズ経由で
作者 Anatomography (en:Anatomography (setting page of this image)) [CC BY-SA 2.1 jp (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/deed.en)], ウィキメディア・コモンズ経由で
両腕の前腕部分は、橈骨と尺骨という2本の骨で形成されています。親指側にあるのが橈骨、小指側にあるのが尺骨です。
橈骨も尺骨もその両端は関節(ひじの関節、手首の関節)を形成し、その両端部を除いた部分を骨幹部といいます。
橈骨・尺骨の骨幹部の骨折
交通事故により、橈骨や尺骨の骨幹部が骨折することがあります。橈骨や尺骨の骨折には激しい痛みと腫れが伴い、橈骨と尺骨の両方が折れると前腕部分が大きく変形します。
前腕部が車と接触して骨折することもありますが、転倒時に腕をつくことによって骨折することが多いとされています。
ひじ関節の脱臼
ひじ関節は、二の腕部分の骨(上腕骨)と橈骨・尺骨が形成している関節です。
この関節の一部が外れることをひじ関節脱臼といいます。ひじ関節脱臼には、前方脱臼、後方脱臼、橈骨頭脱臼の3つの種類がありますが、ほとんどの場合は尺骨が上腕骨に対して後ろ側に脱臼する後方脱臼です。
後方脱臼がなされると、ひじ関節の屈伸ができなくなります。
(まとめ表)
橈骨と尺骨 | 手首と肘の間にある細い2本の骨を指し、ともに両端が手関節と肘関節を形成親指側が橈骨、小指側が尺骨 |
骨幹部の骨折 | 激痛や腫脹を伴う。橈骨と尺骨がともに折れると、前腕の中央部が大きく変形する。 |
肘関節の脱臼 | 肘関節の脱臼。ほとんどの場合は、尺骨が上腕骨の後ろ側に脱臼する後方脱臼。ひじ関節の屈伸ができなくなる。 |
ひじ・前腕の後遺障害にはどんな種類がある?
ひじ・前腕の後遺障害についての悩み
ひじを含む前腕部は、日常生活において、常に使っているといってもおかしくないほど重要な部位です。このような前腕部に欠損、変形や可動域制限の後遺障害が生じてしまった場合、日常生活を送る上で、常に誰かの助けが必要となる等の負担が生じます。そのため、前腕部の後遺障害は、重篤な後遺障害といえるでしょう。
ひじ・前腕の欠損障害
ひじ・前腕の欠損障害とは、ひじ・前腕の全部または一部を失うことをいいます。欠損障害についての後遺障害等級認定においては、欠損の部分や範囲によって異なる等級が認定されます。例えば、ひじ関節より下が切断されてしまった場合には、その切断が両腕の場合は1級3号、片腕の場合は4級4号となります。
ひじ・前腕の機能障害
ひじ・前腕の機能障害とは、ひじや前腕の可動域の制限等、その機能に障害を生じることをいいます。機能障害についての後遺障害等級認定においては、その可動域制限がある部位や可動域の範囲により、異なる後遺障害等級が認定されます。
例えば、片方または両方のひじ関節が完全に硬直し、動かない場合には6級6号、その可動域が通常の50%以下に留まる場合には10級10号となります。
ひじ・前腕の変形障害
ひじ・前腕等の変形障害とは、文字通りひじや前腕が変形してしまう障害をいいます。
基本的に変形は、骨折後に骨がうまく再生しなかったりくっつかなかったりして生じ、その中でも骨がくっつかずに本来曲がるべきでない部位が曲がる状態を、特に偽関節といいます。
後遺障害等級認定においては、偽関節の有無や変形の程度、硬性補装具の必要性の有無等により異なる後遺障害等級が認定されます。
例えば橈骨と尺骨の両方に偽関節が認められ、常に硬性補装具を要する場合は7級9号、橈骨か尺骨のどちらかに偽関節が認められ、時々硬性補装具が必要な場合には8級8号となります。
(まとめ表)
肘・前腕の欠損障害 | 前腕部の一部を失うことであり、欠損の部分や範囲によって、等級が認定される。 |
肘・前腕の機能障害 | 前腕部の動きの障害であり、その可動域制限がある部位や可動域の範囲によって等級が認定される。 |
肘・前腕の変形障害 | ひじや前腕が変形してしまう障害をいい、偽関節の有無や変形の程度、硬性補装具の必要性の有無等によって等級が認定される |
ひじ・前腕の後遺障害に関する判例の慰謝料相場は?
(まとめ表)
判例年月日 | 後遺障害の内容 | 後遺障害の等級 | 後遺障害慰謝料 |
東京地判 平成10.7.29 |
右ひじ関節 可動域制限 |
12級 | 140万円 |
大阪地判 平成13.1.25 |
右ひじ関節 可動域制限等 |
併合7級 | 1000万円 |
東京地判 平成14.1.16 |
右ひじ切断 | 4級 | 1600万円 |
東京地判 平成23.11.18 |
右ひじ関節 機能障害等 |
併合7級 | 1000万円 |
東京地判 平成24.3.16 |
前腕部 橈骨の変形等 |
10級 | 495万円 |
東京地判 平成25.4.16 |
前腕部 橈骨の変形等 |
11級 | 550万円 |
ひじや前腕の後遺障害についての慰謝料は、具体的な事案によってかなり変化します。
おおむね、切断に至らない後遺障害であれば、100万円から500万円の慰謝料が望めますが、それが他の後遺障害と合わさると1000万円程度の請求ができることもあるようです。切断してしまった場合には、さらに高額な慰謝料を望めます。
交通事故で被害を受けてしまった場合、適切な慰謝料を獲得するためには、裁判で十分な主張をすることが必要不可欠です。
交通事故に詳しい弁護士であれば、適切な慰謝料の獲得に向けたアドバイスをすることができます。是非一度弁護士にご相談ください。
後遺障害の慰謝料.comの監修医師
藤井 宏真 医師
奈良県立医科大学附属病院 勤務
アトム法律事務所 顧問医
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