上肢・下肢の後遺障害の手引き
股関節・大腿の後遺障害慰謝料の手引き
このページでは、弁護士が「股関節・大腿の後遺障害慰謝料」について解説しています。
交通事故による股関節・大腿の後遺障害でお困りの方へ。股関節や大腿部に障害がでてしまうと、日常生活でどこに移動するにも支障が出てしまい、大変ですよね。
交通事故で股関節や大腿の後遺症を負い、慰謝料請求のため相談に来られる方はとても多いです。このページでは、股関節や大腿に生じる後遺障害の種類や、慰謝料の相場等を簡単に紹介します。
股関節・大腿部の外傷の基礎知識
股関節の骨折
交通事故により、股関節の骨折が生じることがあります。
歩行者が自動車にはねられて生じることもありますが、一番多いのは自動車対自動車の事故で、衝撃により運転手の体が前方に押し出された結果、ダッシュボードに膝を強く打ち付け、その衝撃で股関節を骨折する場合です。
股関節の脱臼も同様のケースで起こります。股関節の骨折は、高齢者に生じやすいという特徴があります。
変形性股関節症
交通事故の衝撃により、股関節部分の軟骨等が摩耗、変性し、それを修復しようとする体の働きと相まって、股関節が変形していくことがあります。これを、変形性股関節症といいます。
発症すると、歩行時の痛みや股関節の可動域制限など様々な症状が起こり、生活に支障を来たします。変形性股関節症を発症するのは、圧倒的に女性が多いという特徴があります。
大腿骨の骨折
大腿骨の骨折も、交通事故でよくある外傷のひとつです。
大腿骨の骨折は、その部位によって、「大腿骨骨頸部骨折」(股関節内の大腿骨の骨折)、「大腿骨転子部骨折」(股関節より少し下の部分の大腿骨の骨折)、「大腿骨骨幹部骨折」(大腿骨の中央部分の骨折)などがあります。
交通事故では、大腿骨骨幹部骨折が多く、バイクでの車との接触事故や、歩行中の事故で転倒し太股を打ちつけた場合等、太股部分に強い衝撃が加わることで生じます。
(まとめ表)
外傷の名前 | 特徴 | 手術の要否 |
股関節の骨折 | ● 痛み・腫れ
● 足や股関節を動かすことができなくなる ● 筋肉により不均等に引っ張られる結果、足の長さが短くなる |
ほとんどの場合必要 |
変形性股関節症 | ● 歩行時等の痛み
● 可動域の制限 |
軽度の場合は不要、重度の場合は必要 |
大腿骨の骨折 | ● 大腿部の強い痛み
● 明らかな腫れと変形 |
子供は手術せず、大人は手術することが多い |
股関節・大腿部の後遺障害とは?
股関節・大腿部の後遺障害の悩み
股関節や大腿部に、可動域制限や痛み等の後遺障害が残ってしまった場合、ちょっとした移動も苦痛になる点で、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。
特に、高齢である場合などには、寝たきりの状態になることも多いです。このような後遺障害が残ってしまった場合、せめて正しい後遺障害等級認定を受け、適切な慰謝料を得たいところです。
股関節の機能障害
交通事故により、股関節部分が硬直し、または可動域が制限されるなど、股関節の機能障害の後遺障害が生じることがあります。
機能障害の後遺障害は、可動域の範囲や人工関節の置換の有無等により、異なる後遺障害等級認定がなされることになります。
また、股関節のみならず、他の足の関節(膝関節、足首の関節)も同時に後遺障害が生じている場合、各等級が併合されて以下の表よりも重い後遺障害等級認定がされることになります。
(股関節の機能障害の後遺障害等級認定基準)
等級 | 後遺障害の内容 |
8級7号 | ● 股関節の関節が硬直した場合
● 股関節の完全弛緩性麻痺(力が入らない状態)またはこれに近い状態の場合 ● 人工関節等に置換した場合で、その可動域が通常の50%以下に制限されている場合 |
10級11号 | ● 股関節の可動域が通常の50%以下に制限されている場合
● 人工関節等に置換した場合 |
12級7号 | ● 股関節の可動域が通常の75%以下に制限されている場合 |
股関節の動揺関節
交通事故により、股関節の安定性が損なわれ、異常な関節運動が生じる動揺関節という後遺障害が生じることもあります。
動揺関節の後遺障害の場合、関節を保護するために、硬性補装具という装置を使用することが多いです。そして、後遺障害等級は、この硬性補装具の使用頻度等によって異なります。
(股関節の動揺関節の後遺障害等級認定基準)
等級 | 後遺障害の内容 |
8級 | 常に硬性補装具を必要とする場合 |
10級 | 時々硬性補装具を必要とする場合 |
12級 | ● 重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としない場合
● 習慣的な脱臼が生ずる場合 ● 弾発膝の症状がある場合 |
大腿骨の変形障害
交通事故により大腿骨を骨折すると、まれにその骨折部分がうまく癒合しない等の理由により、大腿骨が変形し、変形障害としての後遺障害が生じることがあります。
変形障害の後遺障害等級は、その程度、硬性補装具の要否、運動障害の有無等により細かく分類されています。
たとえば、大腿骨の中心部付近の骨が癒合せず、常に硬性補装具が必要な場合は7級10号、大腿骨の変形が外部から分かる程度の場合や癒合不全を残す場合には12級8号の後遺障害等級認定がなされます。
股関節・大腿部の神経障害
交通事故により、股関節や大腿部に痛みや痺れが残り、後になっても回復しないことがあります。
このような場合、神経障害として、後遺障害等級認定がなされることがあります。
具体的には、その痛みや痺れが交通事故によるものと医学的に証明できる場合には12級13号、医学的に説明可能に留まる場合には14級9号が適用されます。
12級13号の認定には、その神経症状の原因が交通事故であることが客観的に証明できる必要がありますが、14級9号の認定には、交通事故と神経症状の整合性(矛盾しない)があれば足ります。
判例からわかる股関節・大腿部の後遺障害慰謝料の相場
(まとめ表)
判例年月日 | 後遺障害の内容 | 後遺障害の等級 | 後遺障害慰謝料 |
浦和地判 平成6.7.15 |
右大腿骨の変形障害等 | 12級8号 | 240万円 |
東京地裁 平成13.3.28 |
股関節の機能障害等 | 4級 | 1550万円 |
大阪地判 平成15.2.20 |
股関節の機能障害(人工骨頭置換) | 8級7号 | 800万円 |
千葉地判 平成20.6.23 |
股関節の可動域制限 | 12級13号 | 550万円 |
東京地判 平成20.11.12 |
股関節の機能障害等 | 4級 | 1670万円 |
この表から分かる通り、後遺症の程度や年齢、労働への影響等の具体的事情によって、かなり慰謝料の額が変化します。
そのため、適切な慰謝料を獲得するためには、裁判において必要十分な主張をすることが不可欠です。
そして、必要十分な主張をするためには、交通事故に詳しい弁護士に依頼をすることが重要となってきます。
後遺障害の慰謝料.comの監修医師
藤井 宏真 医師
奈良県立医科大学附属病院 勤務
アトム法律事務所 顧問医
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