交通事故でうつ病の後遺症|非器質性精神障害の後遺障害?
作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故でうつ病の後遺症|非器質性精神障害の後遺障害?
交通事故では身体的な怪我や障害を負うだけではなく精神面にも大きな影響をおよぼす可能性があります。事故で感じた強い恐怖や将来に対する不安感などからうつ病の引き金となることがあります。
「うつ病で慰謝料は請求できるのか…?」
後遺障害の認定基準や等級、慰謝料について解説します。
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
気分の浮き沈みが激しかったりする場合はうつ病が疑われます。日常生活に支障を感じている方は早期に精神科や心療内科を受診ください。
うつ病の症状|交通事故でうつ病発症?
うつ病では以下のような症状があげられます。
うつ病の症状例
▼抑うつ気分
怒り
悲しみ
虚無感
▼興味・喜びの喪失
▼その他
食欲減退
過食
体重の増減
睡眠異常(眠れない・ひたすら寝る)
動けない
疲れやすい
気力減退
自分が無価値だと考える
集中力散漫
決断力欠如
希死念慮
などこのような症状が2週間以上つづく場合にうつ病と診断されることが多くなっています。
うつ病は「非器質性精神障害」の後遺障害
後遺症(後遺障害)
十分な治療をつづけても、良くも悪くもこれ以上ならなくなった状態で残る症状。
交通事故では障害の部位・程度により14段階の後遺障害等級で区分される。
うつ病は、後遺障害に認定される可能性があります。代表的な症状の例を紹介します。
うつ病の後遺障害
▼抑うつ状態
悲しい
寂しい
憂うつ
絶望感
おっくう感
▼不安の状態
強い不安
強い苦悩
▼意欲低下の状態
自発性に乏しい
口数が少ない
▼慢性化した幻覚・妄想
有りもしない噂・悪口が聞こえる(幻覚)
間違ったことに、異常な確信をもって意味づけする(妄想)
▼記憶または知的能力の障害
解離性健忘(自分の生活史や、一定の出来事を忘れる等)
解離性障害(自分の名前や年齢が答えられない、計算ができない等)
▼その他の障害
衝動性
不定愁訴
など、このような後遺障害の症状が残る可能性が考えられます。
うつ病の後遺障害認定で増加する保険金
うつ病が後遺障害に認定されると事故の相手方への請求項目が後遺障害慰謝料と逸失利益の2項目が増えます。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ったことで受けた精神的苦痛に対する損害賠償
後遺障害等級に応じて慰謝料の基準が設定されているので、等級ごとに金額は異なります。
後遺障害の逸失利益
後遺障害を負ったことで労働能力が低下・喪失し、将来的な収入が減ることに対する損害賠償
逸失利益を算出するうえで用いられる基本的な計算方法を紹介します。
計算式
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数 |
計算式で用いられる項目の「労働能力喪失率」は、障害の部位や程度、職業などを考慮して増減することになります。主婦などのケースにおける年収算定方法・ライプニッツ係数一覧などについて詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
<関連記事>交通事故における逸失利益の計算方法
逸失利益も後遺傷害慰謝料と同じく等級ごとに労働能力喪失率の目安があります。等級が1つでも異なると金額に差が出るので、症状に応じた等級の認定を得ることが適正な損害賠償の獲得につながります。後遺障害等級の認定では、認定基準に照らした検査方法をおこなう必要があります。
後遺障害等級認定にくわしい弁護士に相談して、認定の可能性を上げていきましょう。
後遺障害等級の申請方法|うつ病のケース
うつ病で後遺障害等級を申請してから等級が認定されるまでの流れを確認します。
①症状固定
治療をこれ以上つづけても、症状の回復が望めなくなった状態を症状固定と言います。後遺障害等級認定を受ける場合、原則として事故から約6ヶ月以上の期間が経過している必要があります。6ヶ月よりも治療期間が短いと、後遺障害の認定がおりない可能性が高くなるので定期的な通院が必要です。
②後遺障害診断書に関する資料の準備
症状固定の診断が出たら、後遺障害等級の認定に向けて後遺障害診断書など医学的資料を準備します。
後遺障害の申請は2通りあります。
「後遺障害診断書のみ」を被害者が任意保険会社へ提出する事前認定
「診断書と一緒に医学的な資料」なども被害者が用意して自賠責保険へ提出する被害者請求
資料収集の手間が必要になる被害者請求ですが、認定に有利となる資料をあわせて提出できるのが強みです。資料収集にご不安がある方は、弁護士へご依頼くだされば弁護士に一任することができます。
③損害保険料率算出機構の審査
提出した資料にもとづいて損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査をおこないます。審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定をおこないます。
さらに詳しい認定手順や後遺障害診断書の書き方についてなどは関連記事をご覧ください。
<関連記事>後遺障害等級の申請
後遺障害等級が認定されると等級に応じた慰謝料が算定されます。つづいては、うつ病で認定の可能性がある等級と慰謝料について詳しくみていきます。
うつ病(非器質性精神障害)の後遺障害等級・慰謝料
うつ病(非器質性精神障害)の後遺障害等級
うつ病(非器質性精神障害)で認定される可能性がある等級はつぎの通りです。
後遺障害等級
うつ病(器質性精神障害)の後遺障害等級
等級 | 内容 |
---|---|
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
うつ病(非器質性精神障害)でこのような等級に認定されるには、一定の認定基準を満たしている必要があります。
認定基準
一定の[a]精神症状が1つ以上ある場合、
「就労意欲の有無」と「[b]能力に関する判断項目の該当数」によって等級が決まる
(1)抑うつ状態 (2)不安の状態 (3)意欲低下の状態 (4)慢性化した幻覚・妄想 (5)記憶又は知的能力の障害 (6)その他の障害 |
このような精神症状が1つでも当てはまるという方が、後遺障害等級の認定では前提となります。
(1)身辺日常生活の状況 (2)仕事・生活に積極性・関心 (3)通勤・勤務時間の厳守 (4)普通に作業を持続すること (5)他人との意思伝達 (6)対人関係・協調性 (7)身辺の安全保持、危険の回避 (8)困難・失敗への対応 |
この「[b]能力に関する判断項目の該当数」と、
就労意欲あり
または
就労意欲が低下・欠落
に応じて等級が決まります。
就労意欲 | |
---|---|
あり | 低下・欠落 |
第9級10号 | |
[b](2)~(8)のどれか1つが欠ける | [b]の(1)の能力で時に助言・援助を必要とする |
[b]の4つ以上の能力でしばしば助言・援助が必要 | |
12級相当 | |
[b]の4つ以上の能力で時に助言・援助を必要が必要 | [b]の(1)の能力が適切又は概ねできる |
14級相当 | |
[b]の1つ以上の能力で時に助言・援助が必要 |
このような認定基準に沿って、うつ病(器質性精神障害)の等級は決められます。
うつ病(非器質性精神障害)の後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の金額は、事故の相手方が算定に用いる基準(自賠責基準・任意保険基準)と弁護士が交渉に介入することで算定に用いることができる基準(弁護士基準)で大きな差があります。
うつ病(非器質性精神障害)に対応する後遺障害慰謝料は以下の通りです。
後遺障害慰謝料
うつ病(器質性精神障害)の後遺障害
等級 | 自賠責基準 (万円) |
弁護士基準 (万円) |
---|---|---|
第9級10号 | 245 | 690 |
12級相当 | 93 | 290 |
14級相当 | 32 | 110 |
自賠責基準と弁護士基準では、約2~3倍以上の差が確認できます。うつ病の適正な慰謝料を得るには、算定に用いる基準が弁護士基準であることがポイントです。
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アトム法律事務所では、保険会社が提示した慰謝料の金額について
「低すぎるのではないか?」
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専属スタッフがはじめにお話をうかがわせていただいています。順番に弁護士におつなぎ致しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
全国12事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2024年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。