交通事故でヘルニアの後遺障害|椎間板・内臓で生じる?慰謝料はもらえる?
作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故でヘルニアの後遺障害|椎間板・内臓で生じる?慰謝料はもらえる?
交通事故の被害では、椎間板ヘルニア・内臓ヘルニアなどを負う可能性があります。交通事故で負ったヘルニアに対して補償(損害賠償)はきちんと支払われるのでしょうか。本日は、「ヘルニア」という後遺障害の認定で得られる慰謝料について解説していきます。
ヘルニアとは?種類・症状の解説
臓器や身体の組織の一部が本来あるべき場所からはみ出している状態を「ヘルニア」といいます。ヘルニアにはさまざまな種類がありますが、本記事では椎間板ヘルニアと内臓ヘルニアを中心に解説していきたいと思います。
椎間板ヘルニア
背骨で起こるヘルニア
種類 | 症状 |
---|---|
頚椎椎間板ヘルニア | 肩こり
背中の痛み 腕の痛み 腕のだるさ・しびれ 足の痛み 足のしびれ 膀胱障害(尿失禁) |
胸椎椎間板ヘルニア | 背中の痛み
脇腹の痛み 歩くにくい 尿が出づらい |
腰椎椎間板ヘルニア | 片足にしびれ 片足に痛み 脱力感 感覚障害 膀胱障害 麻痺 |
臓器ヘルニア
各臓器で起こるヘルニア
種類 | 症状 |
---|---|
腹壁ヘルニア | にぶい痛みの腹痛 腹部に違和感 重症化で激しい痛み・吐き気など |
腹壁瘢痕ヘルニア | 腹部の痛み
食後の腹部膨満感 |
鼠径ヘルニア (脱腸) |
鼠径部のふくらみ 鼠径部の不快感・違和感 鼠径部の痛み |
内ヘルニア | 便秘 吐き気 おう吐 腹痛 重症化で腸管壊死に発展する |
など、ヘルニアにはこのような種類があります。
ヘルニアの後遺症|後遺障害とは
後遺症(後遺障害)
治療をつづけても症状の大きな改善が期待できない状態でなんらかの症状が残ること
交通事故の後遺障害は障害の部位や内容に応じて14段階の等級で区分される
ヘルニアによる後遺症は後遺障害に認定される可能性があります。主な後遺障害の症状はつぎのとおりです。
椎間板ヘルニアの主な後遺障害
神経症状(しびれ、痛み、麻痺)
臓器ヘルニアの主な後遺症
ヘルニア部分の脱出・膨隆
など、ヘルニアでは主にこのような後遺障害が残る可能性があります。
ヘルニアの後遺障害認定で増加する慰謝料
ヘルニアが「後遺障害」に認定されると、
後遺障害慰謝料
逸失利益
という損害賠償の請求を交通事故の相手方に対しておこなうことができるようになります。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ったことに対する精神的ダメージへの損害賠償
慰謝料の金額はあらかじめ後遺障害等級に応じて相場が設定されています。
後遺障害の逸失利益
後遺障害を負ったことで労働能力の低下・喪失につながり、将来的に得られたはずの収入が減額することに対する損害賠償
逸失利益は被害者の年齢や収入などの状況に応じて算出方法が変わります。もっとも、どのような状況の方でも共通する基本となる計算方法があるので紹介します。
逸失利益 基本の計算式
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数 |
基本の計算式で用いられる「労働能力喪失率」は、
障害の部位・程度
事故前の収入
職業・職種
など被害者の状況に応じて数値が上下することがあります。主婦などの場合における年収の算定方法、ライプニッツ係数一覧などについては関連記事で詳しく解説しています。
<関連記事>交通事故における逸失利益の計算方法
後遺障害に対して支払われる慰謝料と逸失利益は、目安となる基準が等級ごとに定められています。つまり、認定を得た等級が症状にふさわしくなければ適正な補償が得られないということにもつながります。症状にふさわしい適切な等級を得るには後遺障害の認定に関する知識が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
後遺障害等級の申請方法|ヘルニアのケース
交通事故で負ったヘルニアにおける後遺障害等級の申請~等級認定までの流れを解説します。
1.症状固定
怪我の治療を開始してから一定期間が経過すると、医師から症状固定の診断が出されることになります。
治療を受けつづけても症状の大きな改善が期待できない状態のことを症状固定といいます。原則として事故後約6ヶ月以上が経過していることで後遺障害等級の認定が受けられるようになります。治療期間が6ヶ月より短くなると、後遺障害認定が受けられなくなる可能性が上がってしまいます。症状に応じた定期的な通院が後遺障害の認定ではポイントになります。
2.後遺障害診断書に関する資料の準備
症状固定した後、後遺障害等級認定の申請に向けて「後遺障害診断書」の準備が必須となります。
後遺障害の申請方法は事前認定または被害者請求の2通りあります。後遺障害の認定の可能性を少しでも高めるには、「【被害者請求】による申請」を選択することです。
それぞれの申請方法の違いと特徴を見てみます。
【事前認定】では、被害者が「後遺障害診断書」だけを用意して任意保険会社に提出します。
【被害者請求】では、被害者が「後遺障害診断書」に加えて「その他の医学資料」を用意して自賠責保険へ提出します。
被害者請求での申請は資料収集の手間をかける必要がありますが、後遺障害の認定基準を証明する有効な資料もあわせて提出できるのが特徴です。資料収集に不安がある方は弁護士に相談してみてください。弁護士に依頼すれば資料収集の作業をすべて任せることができるので心強いです。
3.損害保険料率算出機構の審査
提出した資料から損害保険料率算出機構によって後遺障害等級の認定基準を満たしているかの審査がおこなわれます。審査結果をふまえて自賠責保険会社から等級が認定されます。
後遺障害認定の流れ、申請するうえで非常に重要な意味を持つ後遺障害診断書の書き方などについては関連記事で詳しく解説しています。
<関連記事>後遺障害等級の申請方法
後遺障害等級が認定されると、慰謝料・逸失利益を請求することができるようになります。つづいては、椎間板ヘルニアと内臓ヘルニアで認定の可能性のある後遺障害等級と慰謝料について解説します。
椎間板ヘルニアの後遺障害|神経症状
神経症状の後遺障害等級
神経症状の後遺症は、痛みやしびれを感じる障害が残ることになります。
椎間板ヘルニアによる「神経症状」の後遺障害を負った場合に認定される可能性がある等級はつぎの通りです。
後遺障害等級
椎間板ヘルニアで神経症状の後遺障害
等級 | 内容 |
---|---|
9級10号 | 片方の足に軽度の麻痺があり、就労可能な職種の範囲が相当程度限定されるもの |
12級13号 | 医学的に証明しうる神経系統の機能の障害を残すもの |
14級9号 | 医学的に説明可能な神経系統の機能の障害を残すもの |
「神経症状」の後遺障害ではこのような等級が認定される可能性があります。
神経症状の後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の算定で使用される基準は3つあり、どの基準を使用するかで最終的に得られる金額に差が生まれます。
▼交通事故の相手方が使用する基準
自賠責基準
任意保険基準
▼弁護士への依頼で使用できる基準
弁護士基準
これら3つの基準のなかで最も高額な慰謝料が算定できるのは弁護士基準によるものです。
「神経症状」の後遺障害を負った場合の等級に対応する後遺障害慰謝料はつぎの通りです。
後遺障害慰謝料
椎間板ヘルニアで神経症状の後遺障害
等級 | 自賠責基準 (万円) |
弁護士基準 (万円) |
---|---|---|
9級10号 | 245 | 690 |
12級13号 | 93 | 290 |
14級9号 | 32 | 110 |
最も金額相場が低い自賠責基準と弁護士基準を比較してみると金額の違いが分かりやすいと思います。弁護士基準以外による示談では、約2~3倍以上の慰謝料を失ってしまいます。弁護士に依頼することで「弁護士基準での算定による慰謝料」が得られる可能性が高くなります。慰謝料増額をご希望の方は、まず弁護士に相談することをおすすめします。
内臓ヘルニアの後遺障害|脱出・膨隆
脱出・膨隆の後遺障害等級
交通事故で腹部をぶつける、腹部を手術するなどして内臓が本来あるべき場所に収まらない状態を内臓ヘルニアといいます。
内臓ヘルニアによる「脱出・膨隆」の後遺障害を負った場合に認定される可能性がある等級はつぎの通りです。
後遺障害等級
内臓ヘルニアで脱出・膨隆の後遺障害
等級 | 症状 |
---|---|
9級 11号 |
常時ヘルニア内容の脱出・膨張が認められるもの、または立位をしたときヘルニア内容の脱出・膨張が認められるもの |
11級 10号 |
重激な業務に従事した場合等、腹圧が強くかかるときにヘルニア内容の脱出・膨張が認められるもの |
「脱出・膨隆」の後遺障害ではこのような等級が認定される可能性があります。
脱出・膨隆の後遺障害慰謝料
「脱出・膨隆」の後遺障害を負った場合の等級に対応する後遺障害慰謝料はつぎの通りです。
後遺障害慰謝料
内臓ヘルニアで脱出・膨隆の後遺障害
等級 | 自賠責基準 (万円) |
弁護士基準 (万円) |
---|---|---|
9級 11号 |
245 | 690 |
11級 10号 |
135 | 420 |
まとめ|交通事故でヘルニアの後遺障害
損害賠償問題のお悩みは弁護士相談
ヘルニアは臓器や組織が本来あるべき場所に収まっていないため、痛みなどさまざまな苦痛をともなう症状が残存する可能性があります。ちょっとした痛みでも辛いのに、将来にわたって苦痛が残ってしまうことになったら不安だらけなのではないでしょうか。
にもかかわらず、保険会社が提示する示談金(損害賠償金)は損害に対して十分でないことが往々にしてあります。不十分な補償しか得られず納得のいかない示談となる前に、弁護士に相談してみてください。弁護士に依頼すれば慰謝料増額を実現させる可能性が高まります。
交通事故の損害賠償に関するお悩みはアトム法律事務所の弁護士にご相談ください。
アトムの弁護士は、交通事故に関する問題解決に注力しています。無料相談を実施していますので、まずは気軽にお問い合わせください。
相談方法は、
① LINE相談
② 電話相談
③ 対面相談
のいずれかご都合の良い方法をお選びいただけます。ヘルニアの影響で外出が難しいなどでお困りの方は、LINE/電話相談がおすすめです。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
全国12事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2024年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。