中心性脊髄損傷の後遺症が…何級の認定が見込める?慰謝料はもらえる?
作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
中心性脊髄損傷の後遺症が…何級の認定が見込める?慰謝料はもらえる?
本記事は「中心性脊髄損傷の後遺症」について弁護士が解説します。
交通事故で中心性脊髄損傷が原因の後遺症を負うことになってしまった方に向けて、中心性脊髄損傷の主な症状や後遺障害認定で得られる慰謝料について幅広く解説します。
中心性脊髄損傷はどんな症状?
中心性脊髄損傷は脊髄の中心にある灰白質という中心部分が損傷することで、しびれなどの症状が見られます。
中心性脊髄損傷の症状例
手がしびれる
なにもさわれないほどの痛み
手・指の麻痺
ボタンを留められない
おはしが使えない
中心性脊髄損傷では主にこのような症状があげられます。
中心性脊髄損傷でしびれ…後遺障害は認定される?
後遺症(後遺障害)
十分な治療を受けても、これ以上の改善が見込めない状態で残った症状
交通事故では、症状の部位・症状の程度に応じた14段階の後遺障害等級による区分となる
中心性脊髄損傷によって残った後遺症は「後遺障害」に認定される可能性があります。代表的な症状としてあげられるのはつぎの通りです。
中心性脊髄損傷の後遺症
【麻痺】
運動障害
感覚障害
循環障害
呼吸障害
自律神経障害
排尿障害、排便障害
など、中心性脊髄損傷では主にこのような後遺障害が残る可能性があります。
中心性脊髄損傷で増額する慰謝料・逸失利益
中心性脊髄損傷の後遺障害認定によって、後遺障害慰謝料・逸失利益の2つの損害賠償項目を事故の相手方へ追加で請求可能になります。
後遺障害慰謝料
後遺障害が残ったことで受けた精神的苦痛に対して請求可能な損害賠償
後遺障害慰謝料は、等級に応じた慰謝料の基準が設けられています。
後遺障害の逸失利益
後遺障害が残ったことで労働能力が低下・喪失し、将来的な収入が減ることに対して請求可能な損害賠償
逸失利益の算出に使用される基本的な計算方法を紹介します。
基本の計算式
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数 |
計算式の項目「労働能力喪失率」は、障害の部位・程度、職業などが考慮されて基準を前後することがあります。主婦などの場合における年収の算定方法やライプニッツ係数一覧などについての詳しい解説は以下の関連記事をご覧ください。
<関連記事>交通事故における逸失利益の計算方法
逸失利益についても、等級に応じた労働能力喪失率の基準が設けられています。等級が1つ変わってくるだけで金額も変動します。症状に合った等級で認定を得ることが、適正な損害賠償の獲得につながります。後遺障害等級の認定で重要になるのは、認定基準に沿った検査方法をおこなうことです。
後遺障害等級認定を熟知した弁護士に相談し、認定の可能性を高めましょう。
後遺障害等級の申請の仕方|中心性脊髄損傷のケース
中心性脊髄損傷で後遺障害等級の申請~等級認定までの流れを確認します。
①症状固定
これ以上、治療をつづけても症状の回復が期待できない状態を症状固定と言います。後遺障害等級の認定を目指すのであれば、原則的に事故から約6ヶ月以上の期間が経過している必要があります。治療期間が6ヶ月よりも短いと、後遺障害が認定されない可能性が高くなるため、必要に応じた通院の継続を要します。
②後遺障害診断書に関する資料の準備
症状固定後は、後遺障害等級認定のために後遺障害診断書など医学的な資料の準備をします。
後遺障害の申請方法としては、事前認定あるいは被害者請求のいずれかを選択することができます。
事前認定:被害者が「後遺障害診断書のみ」を任意保険会社に提出
被害者請求:被害者が「診断書とあわせて医学的な資料」なども用意して自賠責保険へ提出
認定の可能性を高めるには、被害者請求による申請方法を選択することをおすすめします。なぜなら、認定に有利となる資料を自分で精査して提出できるからです。資料収集の手間はかかりますが、納得のいく認定の可能性を高められるのであれば努力する価値はあると思います。
仕事が忙しく資料を集める時間がないといったことでお困りであれば、弁護士に相談してみてください。弁護士に依頼すれば、あなたの代理で資料収集をおこなうことができます。
③損害保険料率算出機構の審査
損害保険料率算出機構が提出した資料を確認し、後遺障害等級の審査がおこなわれます。審査結果をふまえ、自賠責保険会社によって等級が認定されます。
さらに詳しく解説した認定手順の流れ、後遺障害診断書の書き方についてなどは関連記事を参照ください。
<関連記事>後遺障害等級の申請
後遺障害等級の認定で、等級に応じた慰謝料が算定されます。つづいては、中心性脊髄損傷で認定の可能性がある等級と慰謝料について詳しく解説していきます。
中心性脊髄損傷で「麻痺」の後遺障害
等級は麻痺の程度と範囲で決まる
中心性脊髄損傷による麻痺で認定の可能性がある後遺障害等級を見ていく前に、等級はどのようにして決められるのか確認しておきます。
麻痺の後遺障害認定は、麻痺の程度と麻痺の種類の組み合わせで決められることになります。
麻痺の種類
麻痺の程度
程度 | 内容 |
---|---|
高度 | 障害部位の運動性・支持性がほぼ失われ、その部位の基本動作ができない (具体的な例) ・完全硬直 ・物が持ちあげられない ・歩けない ・その他、上記に準ずる場合 など |
中等度 | 障害部位の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限がある (具体的な例) ・約500gの物が持ち上げられない ・字が書けない ・足の片方に障害が残り、杖や歩行具なしでは階段を上れない ・両足に障害が残り、杖や歩行具なしでは歩行が困難 |
軽度 | 障害部位の運動性・持続性が多少失われ、基本動作に制限がある (具体的な例) ・字を書くことがむずかしい ・足の片方に障害が残り、歩行速度が遅く、不安定 ・両足に障害が残り、杖や歩行具なしでは階段を上れない |
参考:厚生労働省の通達
麻痺の種類と麻痺の程度の基準を用いて、どの後遺障害等級に該当するのかの検討がおこなわれます。
中心性脊髄損傷の「麻痺」は後遺障害〇〇級?
中心性脊髄損傷の麻痺で認定が予想される等級はつぎの通りです。
後遺障害等級
中心性脊髄損傷による「麻痺」
等級 | 程度 | 範囲 |
---|---|---|
1級1号 | 高度 | 四肢麻痺 |
対麻痺 | ||
中等度 | 四肢麻痺*¹ | |
対麻痺*¹ | ||
2級1号 | 中等度 | 四肢麻痺 |
対麻痺*² | ||
軽度 | 四肢麻痺*² | |
3級3号 | 軽度 | 四肢麻痺*³ |
中等度 | 対麻痺*⁴ | |
5級2号 | 高度 | 単麻痺 |
軽度 | 対麻痺 | |
7級4号 | 中等度 | 単麻痺 |
9級10号 | 軽度 | 単麻痺 |
12級13号 | 軽微な麻痺など |
*¹ 食事・入浴などに常時介護を要する場合
*² 食事・入浴などに随時介護を要する場合
*³ 2級1号に該当するものは除く
*⁴ 1級1号/2級1号に該当するものは除く
麻痺ではこのような等級の認定が予想されます。
中心性脊髄損傷の「麻痺」は後遺障害慰謝料〇〇円?
後遺障害慰謝料は、
事故の相手方が算定で使う基準(自賠責基準・任意保険基準)
弁護士が交渉に介入することで使うことができる基準(弁護士基準)
どの基準を用いて算定するかで金額に大きな差が出ることになります。
中心性脊髄損傷の神経症状に対する後遺障害慰謝料は以下の通りです。
後遺障害慰謝料
中心性脊髄損傷の「麻痺」
等級 | 自賠責基準* (万円) |
弁護士基準 (万円) |
---|---|---|
1級1号 | 1600 | 2800 |
2級1号 | 1163 | 2370 |
3級3号 | 829 | 1990 |
5級2号 | 599 | 1400 |
7級4号 | 409 | 1000 |
9級10号 | 245 | 690 |
12級13号 | 93 | 290 |
* 被扶養者がいる場合、金額が異なる場合があります。
等級にもよりますが、弁護士基準による算定では自賠責基準とくらべると約2~3倍以上の違いがあります。中心性脊髄損傷で適正な慰謝料を得るには、弁護士基準による算定の実現がポイントになります。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
全国12事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2024年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。