歯の後遺障害とは|症状と後遺障害等級認定を弁護士が解説
作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
歯の後遺障害とは|症状と後遺障害等級認定を弁護士が解説
歯は、顔面を打ち付けるなどの強い衝撃をうけることで折れたり、欠けたりすることがあります。
歯の後遺障害では歯の折れ・欠け(歯の欠損)が後遺障害等級にかかわります。
この記事は
症状
後遺症
後遺障害認定の可能性
主にこの3つをメインテーマにしています。
歯の後遺障害に関する後遺障害等級の詳細、後遺障害慰謝料の金額を知りたい方は以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事:歯の後遺障害等級と慰謝料
歯の後遺障害とは?どんな症状がある?
歯の役割と症状
歯は多くの役割を持っています。
・物をかむこと
・言葉を発すること
歯は言葉の発音にも影響を及ぼします。
顎などにも影響が出ている場合は、言葉の発音も要注意です。
歯の折れ・欠けなどの欠損に対しては「補綴」を行います。
補綴(ほてつ)
歯を失ったり、欠けたりした場合には補綴(ほてつ)という処置を行います。
補綴とは
歯の折れ・欠けの部分に入れ歯をしたり、クラウンをかぶせることです。歯の働きを補う目的があります。
歯は時間が治してくれるものではありません。
欠けた部分が口腔内の粘膜を傷つけ、そこから細菌感染につながるリスクもあります。些細なことと思わず、必ず歯科を受診して歯科医の指示を受けるようにしてください。
インプラント治療や白い詰め物について
インプラント治療は、以前と比べると損害賠償として認められる傾向にあります。
しかし必ず認められるというわけではありません。
また、歯の欠損に対して保険適用外の詰め物が認められるとは限りません。
保険適用外というのは、健康保険を使った治療ではないということです。違いは色々ありますが、健康保険を使えないということは治療費は全額負担ということになるのです。
治療費自己負担の割合
健康保険「使用」:3割負担
健康保険「使用しない」:全額負担
保険適用外の素材には、
見栄えの良さ
素材の耐久性
など優れている点が多数あります。
自身の治療の一環として選択するのは自由です。
しかし、見栄えだけを求めた結果、治療費が高額になる場合は損害賠償請求が認められない可能性があります。
加害者に対して治療費を求める場合で、健康保険を使わない治療を検討しているなら、補綴を行う前に一度弁護士に相談するとよいでしょう。
歯の折れ・欠けは「後遺障害」に認定される?
交通事故の損害賠償では、「後遺障害の有無」が分かれ目のひとつです。それは交通事故解決のフローをみてもわかります。
フロー
後遺障害とは
治療を継続しても、身体に残る症状のことを「後遺症」といいますが、後遺症のうち4つの要件を満たすものは後遺障害といいます。「後遺障害」は交通事故の損害賠償で重要なキーワードです。
後遺障害の4要件
(1)交通事故での怪我が原因
(2)医学的に適切な方法で治療を続けたが残った
(3)将来的に回復が困難と考えられる肉体的・精神的な症状
(4)症状の存在が医学的に認められ、労働能力喪失を伴うものとして一定の基準に該当
後遺障害等級は<1~14級>まであります。
後遺障害等級は、後遺症が残る身体の部位や症状によって規定されています。
4つの要件を満たした後遺症で、当てはまる等級があれば後遺障害に認定されます。
後遺障害に認定されると次の費目について請求が可能になります。
後遺障害慰謝料
逸失利益
「後遺障害あり」ならば、相手方に請求できる項目自体が増えます。ですので、後遺障害がない場合と比べて損害賠償金(示談金)が増加します。
内訳
後遺障害認定の2つの方法
治療を継続していると、
治癒・完治する
治療を続けても良くも悪くもならない
どちらかの時期がやってきます。
「良くも悪くもならない」時期は、症状固定といいます。
ちなみに症状固定かどうかは医師の判断が重視されるものです。
注意
後遺障害認定のひとつの目安に<症状固定日が交通事故から6ヶ月以上経過していること>があります。
後遺障害認定を受けるためには後遺障害等級認定を申請する必要があります。申請方法は2つあり、被害者が申請方法を選択できます。
どちらの方法もメリット・デメリットがあります。申請のフローと共にどんなメリットがあるのかをみてみましょう。
後遺障害認定申請方法
(1)事前認定
(2)被害者請求
(1)事前認定
事前認定のフロー
まずは、医師から「症状固定」の診断を受けたら「後遺障害診断書」の作成を依頼してください。医師作成の「後遺障害診断書」は、加害者側の任意保険会社に提出します。被害者が行うことは以上となり、後は後遺障害等級認定の結果通知を待つだけで良いのです。
メリット
被害者自身の手間や負担が少なく済みます。
デメリット
最終的にどのような書類で認定申請したかを把握できません。
もしも想定していた等級認定結果が得られなかったり、後遺障害「非該当」とされた場合、満足感は感じづらいかもしれません。
(2)被害者請求
被害者請求のフロー
医師から「症状固定」の診断を受けたら、「後遺障害診断書」の作成を依頼します。次に、提出資料の準備を始めましょう。「後遺障害診断書」と併せてどんな資料を提出するかは、被害者自身で自由に決定できます。
メリット
被害者自身で資料を選択できるので、自身の主張を裏付ける根拠も併せて提出できます
デメリット
被害者自身で資料を集めるので、事前認定と比較すると負担や手間がかかります。
弁護士目線では、「被害者請求」で申請することをオススメします。
それは、「後遺障害認定」において身体に残った後遺症の存在が医学的に症状を説明・証明できることが重要な意味を持つからです。
医学的な所見などを併せて提出することで、誰から見ても被害者の身体に後遺症が残っていることが分かります。
「被害者請求」は事前認定と比べて手間がかかってしまいます。
しかし、そもそもの「後遺障害等級認定を適正に受ける」という目標を実現するなら、「被害者請求」の方が適しているでしょう。
弁護士に資料収集などを任せることもできます。かかる手間を最小限におさえて、そして後遺障害認定の成果は最大限にしたいなら被害者請求と弁護士への依頼の組み合わせです。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
請求者 | 相手方の保険会社 | 被害者自身 |
後遺障害等級を審査するのは「損害保険料率算出機構」です。そして審査結果をもとに等級が決まり、等級に応じて後遺障害慰謝料が算定されます。審査は原則として書面のみで行われますので、書面から被害者の身体に残る後遺症と仕事にもたらす影響などを認めてもらわなくてはいけません。
歯の欠け・折れは後遺障害〇級該当の可能性
「歯の欠け」「歯の折れ」は後遺障害認定される可能性があります。
等級認定結果を左右するのは、補綴を施した歯の本数です。
認定の可能性がある等級
10級14号:14歯以上に歯科補綴を加えたもの
11級4号:10歯以上に歯科補綴を加えたもの
12級3号:7歯以上に歯科補綴を加えたもの
13級5号:5歯以上に歯科補綴を加えたもの
14級2号:3歯以上に歯科補綴を加えたもの
本数に数える「歯」の定義を確認しておきましょう。
定義
① 歯の完全な喪失
② 著しく欠損した歯に対する補綴(ほてつ)
著しい欠損とは歯冠部の体積の4分の3以上を欠損している状態です。
歯冠部というのは、歯ぐきより上部に位置する歯が見えているところのことです。
つまり歯の見えている部分の体積が4分の3以上失われた場合は、著しい欠損として「本数」に数えることができます。
このとき、「乳歯」や「親知らず」は対象にはなりません。
また、交通事故の処置として歯冠部を切除したり、ブリッジを行う上で両側の歯を削るなどの行為によって上記の状態になったら、本数としてカウントすることができます。
なぜなら交通事故にあうことで失われてしまったと考えられるからです。
また冒頭でも触れたように、交通事故による口腔の損傷具合によっては、言語機能・咀しゃく機能に影響が出ることもあります。
関心のある方は下記ページよりご確認ください。
関連記事:言語機能・咀しゃく機能への影響
交通事故での歯の欠け・折れは「後遺障害認定」の可能性があります
この記事のまとめ
後遺障害等級認定の申請は「被害者請求」がおすすめ
歯の欠け・折れは後遺障害10級14号、11級4号、12級号、13級5号、14級2号に認定される可能性があります。
歯の折れ・欠けに関しては、
事故前後の口腔内の状況比較
何本の歯にどんな処置を施したのか
就労への影響
後遺障害認定にはこういった観点からの主張が重要です。
適切な後遺障害認定を目指す人のために、次にご案内したいのは「弁護士のサポート」です。
ここからは「弁護士無料相談」のご案内です。
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(第二東京弁護士会) 全国12事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2024年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士