交通事故の後遺症|うつ病・PTSD|精神障害の後遺障害認定ポイント
作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故の後遺症|うつ病・PTSD|精神障害の後遺障害認定ポイント
交通事故の後遺症には「うつ病」や「PTSD」などの精神障害として身体に残ることもあります。
外見上は分からないので、周囲からの理解を得づらいという難しさがあります。
しかし、後遺障害として認められる可能性のある症状です。
この記事には以下の3つのテーマがあります。
症状
後遺症
後遺障害認定されうる等級
もし、交通事故の後遺症による精神障害の具体的な後遺障害等級や後遺障害慰謝料の金額を知りたい方は、下記の関連記事をお役立てください。
関連記事:交通事故・精神障害の後遺障害等級と慰謝料
精神障害とは?どんな症状がある?
精神障害の症状
怪我が治らないことが悩ましい…
気分が落ち込んで晴れない…
事故のことがフラッシュバックして苦しい…
交通事故の被害にあった人のなかには、このような精神状態になってしまう人もいます。
交通事故による精神障害の一例で、うつ病PTSDの症状の可能性が考えられます
「うつ病」や「PTSD」は、「非器質性精神障害」の一種です。非器質性とは脳の組織には異常がみられない、という意味です。
本記事では脳組織に異常がみられない「非器質性精神障害」の解説を進めていきます。
もし、交通事故で頭部外傷を受けており、性格変化や物忘れなどの症状がみられる場合は、高次脳機能障害の状態にあるかもしれません。心当たり・関心のある方は、こちらの記事へ進んでください。
それでは、「うつ病」や「PTSD」がどのようなものかを確認していきましょう。
①うつ病
うつ病
身体的・精神的なストレスによって、脳に機能障害が発生している状態をさします。
うつ病の症状・サインをまとめました。
症状 |
---|
・ゆううつな気分 ・何にも興味がわかない ・ずっと眠い ・いつもより起きる時間が早い ・何かに追われているように落ち着かない ・思考力の低下 |
周囲にも分かるサイン |
・表情が暗い ・涙もろい ・飲酒量の増加 |
身体に出るサイン |
・食欲不振 ・疲れやすい ・頭痛や肩こり ・動悸がする ・口が渇く |
この表は、厚生労働省の「知ることからはじめよう みんなのメンタルへルス」に例示されている「うつ病の症状」から抜粋しています。
例えば「身体に出るサイン」として、頭痛や肩こりがあげられています。
しかし、頭痛や肩こりを訴えたからといって、すぐにうつ病を連想する人はあまりいないかもしれません。交通事故にあう前と比較してみて検討する必要があります。
後述する精神科または心療内科で判断をしてもらいましょう。
②PTSD
PTSD
Post Traumatic Stress Disorder(心的外傷後ストレス障害)のことです。
ショックな体験や強い精神的ストレスが心にダメージを与え、時間がたっても強い恐怖を感じてしまうものをいいます。
症状 |
---|
・つらい記憶が急によみがえる ・神経が常に張りつめている ・意識的、無意識を問わず記憶を呼び起こす状況や場面を避ける ・感情や感覚が鈍化する ・症状が継続・悪化する |
PTSDの症状についても、「知ることからはじめよう みんなのメンタルへルス」より症状を抜粋しました。
なお、<症状に当てはまらない=PTSDではない>とは限りません。症状の出方には個人差もあるでしょう。
ですから、一人で抱えるのではなく、医療機関で判断をしてもらいましょう。
心療内科?精神科?通院先はどっち?
「うつ病」も「PTSD」も、その他の精神障害についても、医療機関で判断をしてもらうことが重要です。
ここで疑問として多いのが、心療内科と精神科の違いです。
大まかにはどんな症状として表れているかで分かれます。
精神科→こころに関する不調
心療内科→からだに関する不調
例
不安を強く感じたり、イライラしてしまう→精神科
頭痛がひどかったり、動悸がする→心療内科
医療機関によっては明確な線引きがない場合もあるようです。
もし自宅からの通いやすさなどで検討している医療機関があるならば、まずは電話で対応しているかを聞いてみると良いでしょう。
精神障害(うつ病やPTSD)は「後遺障害」に認定される?
交通事故の損害賠償は、「後遺障害の有無」がひとつの分かれ目といえます。実際に交通事故解決のフローをみてみると、後遺障害の有無によってフローが分かれています。
フロー
精神障害として後遺障害認定される可能性がある「精神状態」や「能力」を例示してみます。
精神障害の状態・能力(一部)
不安状態が継続している
意欲が低下し続けている
仕事や日常生活に対する積極性や関心がない
作業の持続性がみられない
精神障害の後遺障害認定を検討するうえでは、2つの段階があります。
①精神症状
① まずは、次の6つの精神症状のいずれか1つに当てはまっていることです。
▼精神症状
(1)抑うつ状態
(2)不安の状態
(3)意欲低下の状態
(4)慢性化した幻覚・妄想性の状態
(5)記憶又は知的能力の障害
(6)その他の障害(衝動性の障害や不定愁訴など)
どれか1つでも当てはまっていれば、次の「能力に関する判断項目」にあてはまるものがないか見てみましょう。
②能力に関する判断項目
② 次に、能力に関する判断項目にそってチェックしていきましょう。
(1)身辺日常生活 |
---|
・入浴、更衣など清潔保持を適切にできるか ・規則的に十分な食事をすることができるか |
(2)仕事・生活への積極性・関心 |
・仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽等の日常生活等に対する意欲や関心があるか |
(3)通勤・勤務時間の遵守 |
・規則的な通勤や出勤時間等約束時間の遵守が可能かどうか |
(4)普通に作業を持続すること |
・就業規則に則った就労が可能かどうか ・普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうか |
(5)他人との意思伝達 |
・職場において上司・同僚等に対して発言を自主的にできるか等他人とのコミュニケーションが適切にできるか |
(6)対人関係・協調性 |
・職場において上司・同僚と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか |
(7)身辺の安全保持、危機の回避 |
・職場における危険等から適切に身を守れるかどうか |
(8)困難・失敗への対応 |
・職場において新たな業務上のストレスを受けたとき、ひどく緊張したり、混乱することなく対処できるか等どの程度適切に対応できるか |
能力に関する判断項目について、
できない
しばしば助言・援助が必要
時に助言・援助が必要
適切又は概ねできる
このように、4段階で評価をします。
実際に「非器質性精神障害の後遺障害の状態に関する意見書」を用いて、医師がチェックを進めていきます。
後遺障害認定は、①精神症状と②能力に関する判断項目の2つの結果から行われます。
後遺障害に認定されると次の費目についても損害賠償請求が可能になります。
後遺障害慰謝料
逸失利益
「後遺障害あり」ならば、相手方に請求できる項目自体が増えることになるので、後遺障害がない場合と比べて損害賠償金(示談金)が増えます。
後遺障害認定の2つの方法
治療を継続していると、治癒・完治する場合と、治療を続けても良くも悪くもならない
場合のどちらかの時期を迎えることになるでしょう。
一般的には「治療を続けても良くも悪くもならない」時期のことを、症状固定といいます。
症状固定の時期は医師の判断が重視されます。
しかし、精神障害においては注意が必要です。
能力に関する判断項目(1)身辺日常生活が失われている
能力に関する判断項目(2)~(8)のいずれか2つ以上の能力が失われている者
この場合、一時的に症状に大きな改善が認められない状態になっても、療養を継続することとされています。
それは非器質性精神障害が、時間の経過によって症状の改善が見込まれるためです。
療養を継続して十分な治療を行ってもなお症状に改善の見込みがないと判断され、症状が固定しているときには、治ゆの状態にあるものと判断されます。
そして後遺障害等級を認定することになっています。
後遺障害等級申請の方法は2つあり、申請方法は任意で選択可能です。
2つの方法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。申請フローとあわせて確認していきましょう。
2つの後遺障害認定申請方法
(1)事前認定
(2)被害者請求
(1)事前認定
事前認定のフロー
医師からの「症状固定」診断を受けたら、「後遺障害診断書」の作成を医師に依頼しましょう。そして、作成してもらった「後遺障害診断書」を加害者側の任意保険会社に提出してください。
被害者が行うことは以上で、後は後遺障害等級認定の結果通知を待つことになります。
メリット
被害者自身で行うことが比較的少なく、手間や負担はあまりかかりません。
デメリット
最終的に申請をするのは加害者側の任意保険会社になりますので、「後遺障害診断書」以外の提出書類については把握できません。
もし想定していた等級認定結果が得られなかったり、後遺障害が「非該当」という結論が出た場合、自分自身の関与が低いことから納得感は感じづらいかもしれません。
(2)被害者請求
被害者請求のフロー
医師からの「症状固定」診断を受けたら、「後遺障害診断書」の作成を依頼します。ここまでは「事前認定」と共通です。
次にその他の提出資料の準備を始めましょう。「後遺障害診断書」と併せてどの資料を提出するかは、被害者にゆだねられています。
提出は加害者側の自賠責保険会社になります。あとは、後遺障害診認定の結果通知を待つのみです。
メリット
被害者自身でどんな資料を提出するかを決めることができるので、主張を裏付ける検査結果を添付したり工夫ができます。
デメリット
被害者が自身で提出資料を集めるので、事前認定と比較すると負担や手間がかかります。
弁護士としては、「被害者請求」での申請を推奨します。
なぜなら、後遺障害認定を目指すならば、医学的な症状の説明・証明が重要だからです。
基本的には「書面」のみで判断を受けることになるので、医学的な所見の提示は欠かせません。
「被害者請求」は事前認定と比べて手間や負担がかかってしまいます。
しかし、後遺障害等級認定を適正に受けるという本来の目標達成に向けては、被害者請求の方が適しているでしょう。
資料収集などは弁護士に任せることもできます。つまり弁護士に依頼をすれば、手間を最小限におさえて、後遺障害認定の成果が最大になるといえるでしょう。
事前認定 | 被害者請求 | |
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メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
請求者 | 相手方の保険会社 | 被害者自身 |
後遺障害等級は「損害保険料率算出機構」によって審査されます。審査結果による後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料が算定されます。等級が一つ違うだけで慰謝料の金額が大きく変わります。やはり、後遺障害等級を適正に受けられるような申請が必要です。
精神障害は後遺障害〇級該当の可能性
精神障害で認定される可能性がある等級を示します。
認定の可能性がある等級
9級:就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの
12級:多少の障害を残すもの
14級:軽微な障害を残すもの
いずれの等級も「通常の労務に服することはできるが」という前置きのもと、このように定義されています。
より詳細な後遺障害等級ごとの内容や慰謝料金額について関心のある方は、下記のページも参考にしてください。
24時間365日体制|無料相談の予約窓口
この記事のまとめ
後遺障害等級認定の申請は「被害者請求」がおすすめです
精神障害は9級、12級、14級のいずれかにて等級認定を受けられる可能性があります
精神障害は外見上分からなかったり、症状の出方に個人差があったり、なかなか周囲からの理解が得られず大変な苦労をされていることでしょう。そんな中で、加害者側との日常のやり取り・示談交渉は、さらなるストレスの元になります。症状によっては、フラッシュバックなどが起こってしまい正常な判断が難しくなるかもしれません。
被害者の方に、そのような辛い思いをさせたくありません。
弁護士に依頼していただければ、弁護士が交渉の窓口に立ちますので、被害者の方の精神的な負担を和らげることができます。
ここからは「弁護士無料相談」のご案内です。
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交通事故後に「こころ」や「身体」に不調のある人へ
交通事故の被害にあうと、誰しもが一定のショックを受けることになります。しかし、今もしお悩みのことがあるなら、それは「精神障害」にいたるほどの苦しみやつらさかもしれません。誰もが悩んでいること、みんな我慢していることと我慢せずに医療機関へ相談してください。
交通事故の解決実績が豊富な弁護士であれば、安心して交渉事をお任せいただけるかと思います。医療機関とも連携しながら、適正な損害賠償獲得を目指しましょう。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
全国12事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2024年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。