交通事故|視覚障害の後遺障害等級は?慰謝料の相場は?等級別ですぐわかる
作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故|視覚障害の後遺障害等級は?慰謝料の相場は?等級別ですぐわかる
交通事故による視覚障害で認定される可能性がある
後遺障害等級
後遺障害慰謝料
について解説していきます。
症状や後遺障害認定のポイントに関心のある場合は、以下の関連記事をお役立てください。
交通事故による視覚障害①視力の低下・失明
視覚障害には様々な症状があります。
まずは、物をみる力が低下したり、失われること…
=視力低下や失明についてチェックしましょう。
視力低下・失明|後遺障害等級は何級?
視力低下で認定される可能性がある後遺障害等級は次の通りです。
第2級2号
第4級1号
第6級1号
第8級1号
第9級1号
第9級2号
第10級1号
第13級1号
後遺障害等級ごとの具体的な内容を以下の表にまとめています。
両目 | 等級 |
---|---|
0.02以下 | 第2級2号 |
0.06以下 | 第4級1号 |
0.1以下 | 第6級1号 |
0.6以下 | 第9級1号 |
片目 | 等級 |
0.02以下 | 第8級1号 |
0.06以下 | 第9級2号 |
0.1以下 | 第10級1号 |
0.6以下 | 第13級1号 |
次に失明の場合を見ていきましょう。
失明について認定される可能性がある後遺障害等級は次のような等級があります。
第1級1号
第2級1号
第3級1号
第5級1号
第7級1号
第8級1号
具体的な内容は次の通りです。
両目 | 等級 |
---|---|
両目の失明 | 第1級1号 |
片目 | 等級 |
他眼0.02以下 | 第2級1号 |
他眼0.06以下 | 第3級1号 |
他眼0.1以下 | 第5級1号 |
他眼0.6以下 | 第7級1号 |
1眼が失明* | 第8級1号 |
*もう片方の眼の視力は0.6を超える
視力低下・失明ともに、
片目か両目か
視力低下の程度
が後遺障害等級の分かれ目になっています。
「失明」という状態にも定義付けがなされています。
失明とは
眼球を亡失(摘出)
明暗の区別がつけられない
なんとか明暗の区別が分かる程度
光覚弁:暗室にて眼前で証明を点滅させ明暗がわかる
手動弁:手掌を眼前で上下左右に動かし動きの方向がわかる
つづいて失明や視力低下の後遺障害慰謝料をみていきましょう。
視力低下・失明|後遺障害慰謝料の相場は何円?
後遺障害慰謝料は、その等級に応じて目安となる金額が定められています。
後遺障害等級と慰謝料の基準額を一つの表にまとめていますので、みていきましょう。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第1級1号 | 1100万円 | 2800万円 |
第2級1号 | 958万円 | 2370万円 |
第2級2号 | 958万円 | 2370万円 |
第3級1号 | 829万円 | 1990万円 |
第4級1号 | 712万円 | 1670万円 |
第5級1号 | 599万円 | 1400万円 |
第6級1号 | 498万円 | 1180万円 |
第7級1号 | 409万円 | 1000万円 |
第8級1号 | 324万円 | 830万円 |
第9級1号 | 245万円 | 690万円 |
第9級2号 | 245万円 | 690万円 |
第10級1号 | 187万円 | 550万円 |
第13級1号 | 57万円 | 180万円 |
「自賠責基準」と「弁護士基準」では3倍以上の金額差になっている等級もみられます。
この「〇〇基準」というのが何かを解説していきます。
「〇〇」というのは、その慰謝料を算定するのが誰かということです。
言い換えれば、慰謝料の金額の算定方法はひとつではないのです。
このイラストは「慰謝料」の3つの算定方法と、その算定相場の違いを示しています。
弁護士基準というのは、弁護士が用いる基準です。
弁護士が示談交渉をしたり、裁判をする際に用いる基準であり、慰謝料の相場は最も高くなります。
自賠責の基準とは「自賠責保険の基準」のことです。
自賠責保険は、自動車の運転者に加入が義務付けられています。
ですから、交通事故の相手方が自動車であれば自賠責保険の適用は必ず受けることができます。
ちなみに「任意保険の基準」というのは、加害者側が文字通り任意で加入している保険のことです。
自賠責保険との関係はこのようなイメージです。
自賠責保険だけでは被害者に対する損害賠償を支払えない場合があり、その際に足りない分を任意保険でカバーしています。自賠責保険の基準は表に示した通りですが、任意保険の基準は現在は公にされていません。ですが、これまでの事例からみて自賠責保険の基準を少し上回る程度と考えられます。
後遺障害等級が同じでも、誰が慰謝料を算定するかで変わります。
適正な慰謝料獲得のためには、弁護士基準での慰謝料算定は必要不可欠でしょう。
視力の低下や失明についてさらに詳しく知りたい方は、以下の関連記事もお役立てください。
▼関連記事:視力低下や失明の後遺障害等級・慰謝料について
視覚障害②調節機能・運動障害や視野障害・複視
眼球の調節機能・運動障害|後遺障害等級は何級?
眼球の調節機能によって、見たい物との距離に応じて自動でピントがあい、物をきちんと見ることができます。また、自在に眼球を動かせる運動機能も、物を見るうえでは欠かせません。
眼球の調節機能や運動機能に何らかの障害が発生すると、第11級1号、第12級1号に認定される可能性があります。
等級 | 内容 |
---|---|
第11級1号 | 両目の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
第12級1号 | 1眼の眼球に著しい節機能障害又は運動障害を残すもの |
眼の調節機能障害は、本人にしかその苦痛や見えづらさは自覚できません。
そこで大事なことは検査で示すことです。
調節機能の検査はアコモドポリレコーダーという機械を使って行います。
検査の概要
調節機能障害が起こっていることを、健眼と比較して証明します。
▼被害者自身に健眼がある場合:調節力の異常が発生していない眼と比較。
1/2以下の値なら著しい調節機能があるといえます。
▼被害者自身に健眼がない場合
年齢別の調節力の平均と比較。
1/2以下の値なら著しい調節機能があるといえます。
年齢別の調節力の平均は以下の通りです。
注意点としては、調整力は加齢とともに減少することです。
交通事故による損害賠償においては、事故との因果関係は非常に重要です。
被害者の事故当時の年齢が55歳を超えている場合、調節機能の低下が一般的に加齢とともに下がっていると考えられ、原則として後遺障害には認定されません。
年齢 | 調整力(D) |
---|---|
15–19 | 9.7 |
20–24 | 9.0 |
25–29 | 7.6 |
30–34 | 6.3 |
35–39 | 5.3 |
40–44 | 4.4 |
45–49 | 3.1 |
50–54 | 2.2 |
55–59 | 1.5 |
60–64 | 1.35 |
65– | 1.3 |
※55歳以上で健眼がない場合は後遺障害認定の対象外
運動機能障害は、「ヘススクリーンテスト」や「ゴールドマン視野計」で測定可能です。
運動機能障害
眼球の著しい運動障害とは、注視野の広さが1/2以下に減ったことをさします。
注視野というのは、頭部を固定したまま「眼球のみ」を動かすことで直視できる範囲のことです。
ヘススクリーンテスト | |
---|---|
視標を赤と緑のガラスでみた時の両目の「位置ずれ」を確認。 | |
ゴールドマン視野計 | |
眼球のみを運動させ、直視できる範囲(注視野)を測定。 単眼視平均:約50度 両眼視平均:約45度 平均の1/2以下に減っている場合は運動障害が考えられます。 |
眼球の調節機能・運動障害|後遺障害慰謝料の相場は何円?
調節機能障害や運動機能障害は以下の後遺障害等級として認定される可能性があります。
調節機能障害・運動機能障害
第11級1号
第12級1号
具体的な後遺障害等級ごとの慰謝料相場をチェックしましょう。
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第11級1号 | 135万円 | 420万円 |
第12級1号 | 93万円 | 290万円 |
やはり弁護士基準での相場の方が3倍以上高い結果になっています。
視野障害の後遺障害等級は何級?
次に視野障害についても認定される可能性がある後遺障害等級を示します。
視野障害
第9級3号
第13級3号
等級 | 内容 |
---|---|
第9級3号 | 両目に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
第13級3号 | 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
視野障害は「ゴールドマン視野計」を使って検査します。
1点を見ている時に同時に見える広さ
合計8方向の視野の角度の合計
これらを算出します。
その値が正常視野の角度の60%以下であれば、視野障害の可能性があります。
下表に正常角度を示します。
方向 | V/4 |
---|---|
上 | 60 |
上外 | 75 |
外 | 95 |
外下 | 80 |
下 | 70 |
下内 | 60 |
内 | 60 |
内上 | 60 |
視野障害といっても「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」と幅広くあります。
視野障害の詳細は以下の関連記事で詳しく取り上げていますので、ぜひお役立てください。
関連記事:眼の後遺障害について
複視の後遺障害等級は何級?
次に、物が二重に見える複視について、認定される可能性がある後遺障害等級を確認していきましょう。
複視
第10級2号
第13級2号
等級 | 内容 |
---|---|
第10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
第13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
視野障害も複視も、症状が表れているのが両目か片目かで後遺障害等級は変わります。
医師の指示をよく聞いて、症状を客観視できる検査は定期的に受けることがよいでしょう。
視野障害・複視|後遺障害慰謝料の相場は何円?
視野障害・複視それぞれについて、該当する後遺障害等級に応じた慰謝料の相場があります。
後遺障害等級別の表にまとめました。
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第9級3号 | 245万円 | 690万円 |
第10級2号 | 187万円 | 550万円 |
第13級2号 | 57万円 | 180万円 |
第13級3号 | 57万円 | 180万円 |
いずれの等級においても後遺障害慰謝料の金額は弁護士基準は高くなります。
あくまで基準額になりますが、自賠責保険の方が上回るためには2.5~3倍の増額が必要です。
万一、それほどに増額されるような交通事故であったなら、弁護士基準でも同様に増額されるでしょう。
つまり弁護士基準での慰謝料算定がやはり重要なのです。
視覚障害③|まぶたの欠損・運動障害
まぶたの欠損・運動障害|後遺障害等級は何級?
まぶたの後遺障害とは次のような状態を言います。
▼まぶたの欠損
一部が欠けた
まぶたそのものを失った
▼まぶたの運動障害
まぶたが思うように動かせない
欠損や運動障害についても、両目か片目か、そしてその程度によって後遺障害等級が決まります。
等級 | 内容 |
---|---|
第9級4号 | 両目のまぶたに著しい欠損を残すもの |
第11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
第11級2号 | 両目のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
第12級2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
第13級4号 | 両目のまぶたの一部に欠損を残すもの |
第14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残すもの |
内容についてさらに詳しく見ていきましょう。
欠損
著しい欠損→まぶたを閉じても角膜(黒目)を「完全に」おおえないもの
一部欠損→まぶたを閉じたときに「白目」が見える状態
運動障害
著しい運動障害
→まぶたを閉じても瞳孔領を完全に覆えない
→まぶたを開けても瞳孔領を完全に覆ってしまうもの
それぞれの程度に応じて認定等級が決まります。
まぶたの欠損・運動障害|後遺障害慰謝料の相場は何円?
それぞれの後遺障害等級ごとに定められた後遺障害慰謝料の基準額をまとめました。
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第9級4号 | 245万円 | 690万円 |
第11級3号 | 135万円 | 420万円 |
第11級2号 | 135万円 | 420万円 |
第12級2号 | 93万円 | 290万円 |
第13級4号 | 57万円 | 180万円 |
第14級1号 | 32万円 | 110万円 |
まぶたの障害(まつげはげ)|後遺障害等級は?
まぶたの障害の中には、まつげに関するものもあります。
それは「まつげはげ」です。
まつげはげで認定される可能性がある後遺障害等級は次の通りです。
等級 | 内容 |
---|---|
第13級4号 | 両目のまぶたの一部にまつげはげを残すもの |
第14級1号 | 1眼のまぶたの一部にまつげはげを残すもの |
まつげが生えている周辺1/2以上がはげている状態を「まつげはげ」といいます。
そのまつげはげが片眼か両目かで等級が変わります。
等級ごとの慰謝料は次の通りです。
まぶたの障害(まつげはげ)|後遺障害慰謝料の相場は何円?
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第13級4号 | 57万円 | 180万円 |
第14級1号 | 32万円 | 110万円 |
13級・14級どちらにしても、弁護士基準の相場は3倍となり、基準額としては100万円を超えています。
しかし、相手方から提案される金額はその1/3にも満たないものになる可能性があります。
24時間・365日|無料の弁護士相談予約窓口はこちら
交通事故により視覚障害をおってしまった…。
今まで当たり前にできていたことができなくなったり、一番重篤な場合だと「失明」に至ってしまうケースもあります。
そんな重篤な障害であっても、相手方から提案される金額は不十分である可能性は高いです。
ご相談いただくきっかけはさまざまです。
たとえば‥‥
相手から提案された示談内容が適切か判断できない
慰謝料でいくらもらえるのか見当がつかない
実際にこの金額が妥当かわからない
悩んだり、分からないことがあるのは当然です。
「ささいなこと」と思わず、お気軽にお問い合わせください。
弁護士だからできるサポートがあります
弁護士は医師ではありませんので、治療行為はできません。
しかし治療を経過などを見せていただき、後遺障害認定を受けられるようなサポートをすることは可能です。
また、保険会社とのやりとりでは窓口となり、被害者の方が治療に専念できるような環境づくりのお手伝いもできます。
そして示談では、弁護士基準で獲得できるように精いっぱいの交渉をします。弁護士だからできるサポートはまだまだあります。ぜひ困っていること、悩んでいることを聞かせてください。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
全国12事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2024年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。