外傷性てんかんの後遺障害|症状や後遺障害等級、慰謝料請求の流れを解説
作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
外傷性てんかんの後遺障害|症状や後遺障害等級、慰謝料請求の流れを解説
交通事故で外傷性てんかんを発症した場合、後遺症として残るのか?、その場合慰謝料は請求できるのか?ということが気になるかと思います。
そこでこの記事では、
てんかんの症状
後遺障害等級認定の流れ、示談のポイント
について解説しています。
外傷性てんかんの基礎知識|症状と後遺障害を解説
外傷性てんかんとは
外傷性てんかんとは、外から脳に衝撃が加わることで、脳が発する信号に異常が生じることです。
交通事故による衝撃でてんかんが発生する場合もあります。
外傷性てんかんでの症状として発作があり、その発作には「単純部分発作」「複雑部分発作」「二次性全般化発作」があります。それぞれについて、詳しく見ていきます。
外傷性てんかんの症状
単純部分発作の症状
原因 | 脳の一部で異常な信号が発せられる |
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症状 | ▽異常が生じた部位により異なる ▽発作中意識はある |
異常が発生した部位別の症状は、以下のようになります。
前頭葉:運動発作(痙攣、ねじれなど)
側頭葉:自律神経発作(腹痛、悪寒、発汗、吐き気など)、精神発作(未視感、既視感、不安感など)
頭頂葉:体性感覚発作(手足のしびれ、つっぱり、体のピリピリ感など)
後頭葉:視覚発作(異様な光や色が見えるなど)
単純部分発作では発作中も本人に意識はありますから、意識はあるのに自分の体が勝手に動くというような状態になります。
複雑部分発作の症状
原因 | 前頭葉または側頭葉で異常な信号が発せられる |
---|---|
症状 | ▽異常が生じた部位により異なる ▽発作中意識障害が生じる |
複雑部分発作では発作中に意識を失うため、発作中のことを覚えていなかったり意識が朦朧としていたりします。
異常が生じた部位別の症状は、以下のようになります。
▼前頭葉
体を激しくくねらせる
自転車こぎのような動きをする
むやみに歩き回る
口をぺちゃぺちゃ鳴らす
うめき声や叫び声などを発する
▼側頭葉
急に止まる
口をもごもごさせる
手をたたく
意味不明の言葉を繰返す
二次性全般化発作
原因 | 脳の一部での信号の異常が脳全体に波及する |
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症状 | ▽手足を伸ばし硬直 ▽歯を食いしばり呼吸停止 ▽手足を一定のリズムでゆらす など ▽意識障害がある |
二次性全般化発作は、初めは脳の一部で異常が生じていたものが脳全体に広がり、体の硬直や呼吸の停止といった症状に発展する発作のことです。
この場合も意識障害が生じるため、発作中のことは覚えていません。
外傷性てんかんは後遺障害になる?
後遺症(後遺障害)
これ以上治療を行っても大幅な改善は見られないと判断された症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
「交通事故の後遺障害」という観点から言えば、数カ月に一回以上てんかんの発作が出る、または発作がなくても明らかにてんかん特有の脳波が見られるという場合には後遺障害が残ったとされます。
外傷性てんかんの後遺症|慰謝料請求の流れ
外傷性てんかんの後遺症で増える慰謝料は?
交通事故による外傷性てんかんが後遺障害として残り、それに対して後遺障害等級が認定されると、後遺傷害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できるようになります。
後遺障害慰謝料
後遺障害によって今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償
後遺障害の逸失利益
後遺障害により労働能力が失われたことで減った将来の収入への補償
(異動・退職を余儀なくされた、出世が難しくなったなど)
→外傷性てんかんによる後遺障害慰謝料、逸失利益の金額はこちら
では、後遺障害等級を獲得し、後遺傷害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求するためにはどうしたらいいのか見ていきましょう。
後遺障害等級の申請方法|外傷性てんかんの場合
では、実際に外傷性てんかんで後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
①症状が固定される
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
②後遺障害診断書など書類の用意
症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定の申請に必要な資料を準備します。後遺障害等級認定の申請時に必要な資料は、主に以下のようになっています。
必要資料
後遺障害診断書
医師による診断書
診療報酬明細書
交通事故証明書
後遺障害の存在や症状を裏付ける資料
ただし後遺障害等級認定の申請方法は2種類あり、どちらを選ぶかで上記のうち被害者自身で集める資料の種類が変わりますし、その提出先も変わります。一つずつ見ていきましょう。
事前認定の場合、被害者自身が用意するのは後遺障害診断書のみです。それを加害者側任意保険会社に提出すると、残りの必要資料は保険会社が集めてくれます。
手間はかかりませんが、審査に有利になるような資料を追加したくても難しいという点に注意が必要です。
被害者請求の場合は、上記の必要書類全てを被害者自身が用意し、加害者側自賠責保険会社に提出します。
手間はかかりますが、審査に有利になるような追加資料を添付できます。後遺障害等級認定の審査は、基本的に提出した資料のみを見て行われますので、これは重要です。
また、資料集めを弁護士に依頼することもできます。
③損害保険料率算出機構による審査
保険会社に資料を提出すると、そこから損害保険料率算出機構に資料が渡り、審査が始まります。結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
高次脳機能障害などのように経過を見る必要があるもの、判断が難しいものは、審査が長期化しやすいようです。
示談交渉のポイント
後遺障害等級認定の結果が出て、他の損害額も確定すると、加害者側との示談交渉が始まります。
ここで注意すべきなのが、①交渉相手は加害者側任意保険会社であるということ、②加害者側から提示される慰謝料金額は低額であるということです。
任意保険会社は日ごろから示談交渉を行う交渉のプロです。そのため、提示された金額を増額させようとしても、十分に増額できない可能性が高いです。
そのため、十分な金額で合意に至るためには、弁護士に示談交渉を依頼していただくことが望ましいです。
外傷性てんかんの慰謝料請求は弁護士に相談
交通事故による外傷性てんかんで後遺障害が残った場合、①後遺障害等級は必ずしも認定されるとは限らない、②加害者側から提示される低額な示談金を増額させるのは容易ではないという点から、弁護士に相談されることをお勧めします。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
全国12事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2024年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。